ことわざ・諺:教訓や諷刺などの、昔から伝わる言いまわし
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ことわざ・諺 ことわざ adage

『ANGELIC LAYER』3巻8ページ(CLAMP/角川書店 角川コミックス・エース)
  • 祥子「なーんだー
  • ANGELIC LAYERのためかー
  • まだ始めたばっかなのに
  • 本当に夢中ね みさき」
  • みさき 「うんっ!」
  • 祥子「やっぱカエルの子はカエルか
  • (ポソ…)
  • みさき「な?」
-『ANGELIC LAYER』3巻8ページ(CLAMP/角川書店 角川コミックス・エース)
  • 定義重要度2
  • ことわざ・諺は、昔から伝わってきている言いまわしをすることです。その特徴としては、生活の知恵から生まれたこと、教訓や諷刺が多いこと、短く簡潔であることなどをあげることができます。

  • 効果

  • 効果1人間が長い間で発見してきた、経験や生活の知恵を役立てる

  • 「ことわざ」には、生活の知恵を集めたものが多くあります。そして、その知恵というのは、長い年月をかけて見つけてきた生活の知恵です。ですので「ことわざ」を使うことは、人間が積みかさねてきた経験にもとづいてモノゴトを解決しようということだといえます。
  • キーワード:経験、体験、経る、庶民、知恵、格言、処世術的、世渡り

  • 効果2判断の根拠になる

  • どちらを選んだらいいのか。どれに決めたらいいのか悩んだとき。その判断をする根拠として、「ことわざ」を使うことができます。ですので「ことわざ」は、いま目の前に実際に突きつけられている問題を解決する材料とすることができます。そういった意味で「ことわざ」は、実際にモノゴトを解決するという実践的なものです。そして同時に、行動の道しるべとなるものでもあります。
  • キーワード:訳、理由、原因、事情、よりどころ

  • 効果3目の前のことを解決する

  • 「ことわざ」は、向かい合っている「場面」によって当てはまるものが変わります。つまり、どんなところでも通用するようなものではないということです。「ことわざ」は、いま面している「場目」を解決しようとするものなので、決して「普遍的な真理」を示しているわけではありません。
  • キーワード:妥当、適正、適切、適格、適当
  • 使い方
  • 使い方1「ことわざ」のパターン・その1:「○○ということわざがある」

  • 「ことわざ」を使うシーンとしては。まず第1に、「話し手=聞き手の勝手な考えかたではない」ということを強調しておきたい、というばあいが考えられます。そういったときに便利なのが、この1つ目のパターンです。これを採用すると、「昔からある古い考えかたです」といったことを断っておく効果があります。
  • 使い方2「ことわざ」のパターン・その2:「ことわざには(にも)、○○という」

  • これは、「引用しているフレーズです」ということを明らかにしておくというものです。第1の言いまわしに近いものがあります。「 成句・イディオム」の項目で書いた「『幽霊の正体見たり枯れ尾花』っていってね」という表現は、これに当てはまります。
  • 使い方3「ことわざ」のパターン:その3「これこそ○○だ」「○○とはこのことだ」

  • 「これこそ○○だ」「○○とはこのことだ」のほかに、この分類に属するものとしては。「まさに○○」「まことに○○」「やはり○○」「文字どおり」といったものがあります。このページで引用した『やっぱ カエルの子はカエルか…』というのは、これに含まれます。
  • 注意

  • 注意1正反対の「ことわざ」というのが数多くある

  • たとえば「善は急げ」には、反対であるはずの「急いてはコトをし損じる」という「ことわざ」がある。しかも、ほとんどの「ことわざ」は、そういった正反対の「ことわざ」を持っている。ですので「ことわざ」は、決して普遍的な真理を言いあらわしたものではないのです。けれども、あたかも普遍的な真理であるかのような断定的な使いかたをすることができます。
  • キーワード:対照的、対比的、正反対

  • 注意2状況に合った「ことわざ」を使う必要がある

  • 「ことわざ」は、どのような場面で使えばいいのかということに気をつける必要があります。もしも、いま直面していることに合わない「ことわざ」と使うと、的はずれなことばになってしまいます。
  • キーワード:実践、行う、実行

  • 注意3保守的な考えかたに基づいている

  • 「ことわざ・諺」というものは、昔から伝わってきたモノです。つまり、ある集団の中で経験として積みかさねてできあがったものが「ことわざ」です。そのため、どうしても「今までの考えかた」に従うことになります。そのため、「保守的」「多数派」「体制側」に有利にはたらくことになってしまいます。
  • キーワード:保守的、体制、多数
  • 例文を見る)
  • 引用は『ANGELIC LAYER』3巻からです。

    主人公は、「みさき」

    「みさき」は、東京に出てきて祥子と暮らすようになる。そして、新しい生活の中でハマっているものがある。それが、「ANGELIC LAYER」というもの。

    みさきが「ANGELIC LAYER」に夢中になっている様子を見て、祥子がひとこと。
    やっぱカエルの子はカエルか (ポソ…)
    なんで、みさきが「ANGELIC LAYER」に夢中になることが「カエルの子はカエル」になるのか?

    その答えは、まだ『ANGELIC LAYER』という作品を見ていない人のために、いわないで伏せておきます(まあ、言葉どおりなのですが)。

    とにかく、この「カエルの子はカエル」というところが、「成句」にあたります。
  • レトリックを深く知る

  • 深く知る1〈「ことわざ」グループ〉に含まれるレトリック用語の特徴
  • 「ことわざ」に似た意味を持ったレトリック用語は、たくさんあります。それは言いかえれば、「慣用句」と同じようなレトリック用語の数が、多いということです。

    では、ナゼ「レトリック用語がたくさんあるのか」。その理由は、「だれにでも分かるような、ハッキリした境界線を引くことができない」というところにあります。厳密なれラインを引くのが、あまりうまくいかない。うまくいかないので、いろんな人が境界線の引き方にチャレンジをした。結果、ぜんぜん統一性のないレトリック用語だけが、どんどんつくられていった。…と、そういったことです。

    そこで、このサイトでは実験として。
    3つの大きなパターンに分けることを提案してみます。それをまとめたのが、下に書いた表です。

    「パターン通りの言葉づかい」を使うワナ

    ごくふつうの会話 ・ネットとかの文
    「パターン通りの言葉づかい」のうち
    本来の意味との距離が近い
    ものを使うと
    決まり文句・クリシェ(cliche)」ばかりになって
    無味乾燥な文になりやすい
    ごくふつうの会話 ・ネットとかの文
    「パターン通りの言葉づかい」のうち
    本来の意味との距離が遠い
    ものを使うと
    ことわざ(adage)・慣用句(collocation)
    あいさつ言葉」が重なっていく結果
    隠語のような閉鎖的な文になりやすい
    難しそうな文
    「パターン通りの言葉づかい」のうち
    本来の意味との距離が近い
    ものを使うと
    格言・金言
    警句・箴言」がが目立ってしまうため
    小難しいだけで薄っぺらな文になりやすい
    難しそうな文
    「パターン通りの言葉づかい」のうち
    本来の意味との距離が遠い
    ものを使うと
    寓言(parable)・寓話(fable)
    故事成語」が重なっていく結果
    専門家だけしか読めない文になりやすい


    うまくまとめきれていなくて、すみません。

    ただ私(サイト作成者)にとっては、考えるところが多くあります。

  • 深く知る2〈「ことわざ」グループ〉に含まれるレトリック用語の特徴
  • そこで。
    まずは、この表に書かれている〈「ことわざ」グループ〉の特徴を1つずつ見ていくことにします。

  • 深く知るa「ことわざ」は、話しことばのほうが向いている
  • 「ことわざ」を使うことができるのは、書きことばだけではありません。話しことばでも、十分に使うことができます。

    これに対してたとえば、「警句」だとか「故事成語」のように話しことばには使いにくいものもあります。こちらは、書きことばがメインとなります。
  • キーワード:話しことば、口語

  • 深く知るb本来のモノとは関係ないことを、引きあいに出している
  • 「鉄は熱いうちにつけ」--本当に「鉄をつくっている」わけではありません。

    「船頭多くして船山に上る」--本当に「山に船頭が登っている」わけではありません。

    つまり。
    ことわざでは言いたいこととは結びつきもない、そんな「たとえ」を出してきます。これは、ちょっと例外があります。ですが、ほとんどに「ことわざ」に当てはまる性質です。
  • キーワード:例、たとえ、事例、好例、例える、比喩、見立てる

  • 深く知るc古くから伝わっているけれど、具体的な時代は分からない
  • 「ことわざ」は、昔から使われて言い習わしてきたものだと考えられます。ですが具体的に「いつ」つくられたのかというのは、分かりません。このことは、「故事成語」のようにハッキリ時代のわかるものとは一線を画している、といえます
  • キーワード:歴史、伝承、伝わる、由来、由緒

  • 深く知るd具体的に例をあげて説明している
  • 「三人寄れば文殊の知恵」といえば、「3人集まれば、よい知恵が浮かぶ」ことをあらわします。そして、「いい知恵が考えつく」ということの例として、「文殊」を越えるぐらいを知恵が浮かぶということ言っているわけです。

    ですので、これは具体的な例をあげているものだといえます。

  • 深く知るe「ことわざ」は、起源を探しだすことはできない
  • 「起源」を探すことができないということ。これはつまり、「聖書」に書いてあるとか、中国のナントカという古典から生まれたとか。そういった記録がないということです。

    この理由は、「ことわざ」が庶民の知恵によって生まれたというところにあります。

    もともと、「ことわざ」として扱われることばを口にしたヒトは、「ことわざ」なんかになるとは思っていなかったのです。たまたま、ちょっと比喩を使ってみただけだったのです。けれども、これを聞いたほかの人がこのフレーズを使ってみた。そんなマネがくり返されるうちに、いつのまにか比喩になっていた。と、そういった流れで「ことわざ」が成りたっています。

    そのため、「ことわざ」の起源を見つけ出すのは、かなり難しいモノとなります。
  • キーワード:匿名性

  • 深く知るf教訓のような行動の基準となる
  • 「ことわざ」には、「教訓」となるようなものもあります。つまり、「○○をしてはいけない」という内容をもつものも、たくさんあるのです。
    「勝って兜の緒を締めよ」
    --勝ったからといって気を抜いてはイケナイ
    そんな「教訓」をもつ「ことわざ」が、少し考えれば何個も思い浮かべることができます。

    ここで大事なのは、どうして「教訓」っぽいものが多いかということ。それはなぜかというと、
    ある集団を所属しているメンバーのみんなが、ルールとしなければならないこと。
    そのルールが、「ことわざ」で表される。
    という機能をもっているからです。
  • キーワード:教え、忠告、説教、さとす、教訓、規範、規準、スタンダード、決まり、規則、ルール、掟、規律、命じる、言いつける、指図する、命令

  • 深く知るg自分の考えを主張するときに、その根拠となる
  • 自分がもっている「主張」。いいかえれば、なにかの主張を「説得」や「賛成」してもらう必要があるとき。この「ことわざ」は、大きな威力を発揮します。

    なにかを「説得」したり「賛成」してもらったりするときには、なにか「根拠」とか「理由」とかを伝える必要があります。このとき「ことわざ」を使うのは、とても威力のある働ををするからです。
  • キーワード:説得、説きふせる、言いこめる

  • 深く知るh「ことわざ」の長さは、文1つくらい
  • 「ことわざ」の多くは、文1つくらいの長さです。この長さは、伝えることになる「ことわざ」の内容から考えると、かなり短いものです。

    このことは、一方でたしかに「ことわざ」は簡潔なモノだと言うことができます。ですが同時に、広がりをもった大きな内容を伝えることができるともいえます。
  • キーワード:手短、簡約、簡略、簡潔、簡素、ずばり、ずばずば

  • 深く知るi「ことわざ」は諷刺や皮肉を含んでいる
  • 「ことわざ」は、「諷刺」だとか「皮肉」といった面を持ちあわせています。ですがこの「諷刺」や「皮肉」というものを使うことには、プラス面とマイナス面があります。

    「プラス面」としては、世の中のもっている矛盾をあばき出す効果がある、ということが挙げられます。

    ですが「マイナス面」もあります。それは、どうしても「説教くさい」言いまわしになってしまうというところです。
  • キーワード:諷する、諷刺、嫌味、とがめる、皮肉、アイロニー

  • 深く知る3「ことわざ」は、目の前の問題を解決するためにある
  • 「ことわざ」は、きわめて実践的です。つまり、それぞれのシーンで、それぞれの「ことわざ」を、それぞれの相手に当てはめて使うものです。

    ですので「ことわざ」に求められているもの。それは、あくまで「目の前の問題に対する、この場での答え」でしかありません。言いかたを変えれば、「ことわざは状況に依存している」ということです。

    逆の言いかたをすれば。
    「ことわざ」を使うことのできる引き金となるのは、その場の状況によるということです。
  • キーワード:状況、在り方、状態

  • 深く知る4「ことわざ」の使える状況を、すばやく見抜く
  • 「ことわざ」は、とても大きな力を持っています。そのことは、このページの中でも、たびたび書いています。

    ですが困ったことに。
    「ことわざ」は、使うことのできる場面が限られているのです。もし状況にそぐわない「ことわざ」を使うと、かなりマヌケです。

    なので。
    とっさに「ことわざ」が、口から出てこなければなりません。
  • キーワード:通暁、よく知る、感知、関知、知恵、自由自在、自在、思いのまま、縦横無尽

  • 深く知る5上手な「ことわざ」の使いかた
  •  

  • 深く知るa「ことわざ」の最後をぼやかす
  • たとえば
    「泣くこと地頭には、なんとやら」
    という言いまわし。これは、ことばの最後を「なんとやら」と言っています。つまり、最後をぼやかしているわけです。

    このように、最後をぼやかすことのメリット。それは
    この「なんとやら」の部分。このスキマを、聞き手=読み手のほうでつけ足さなければならない
    ということです。もしも、つけ足すことができるならば、その「ことわざ」はよく知られているフレーズだということを、聞き手=読み手が認めたということに等しくなってしまいます。になります。

    そして、このように聞き手=読み手が、そのようにつけ足してしまったとき。その「つけ足す」ということでもって、話し手=書き手の考えを汲み取っているということです。

    ですので。もし、この「つけ足す」必要がある「ことわざ」にたいして真っ向から反対するためには。
    あなたの言った「ことわざ」は、完成させると「泣くこと地頭には勝てぬ」というものになる。

    その「ことわざ」は、たしかに当てはまる場合もある。

    しかし今の状況には、○○といった意味で不都合になる。

    なので今回は、「泣くこと地頭には勝てぬ」という「ことわざ」は当てはまらない
    という、かなり遠まわりな反論をする必要がでてきます。

    といったわけで。
    こういった、「ことわざ」の最後を「○○なんとやら」というということ。かなりの威力を発揮します。

  • 深く知る6「ことわざ」に関するの特徴
  • 「ことわざ」の使いかた以外についての特徴も挙げておきます。

  • 深く知るa正反対のものがある
  • さいしょのほうにも書きましたが。

    「ことわざ」は、意味がまったく正反対のものがあります。それも、いくつかある、というレベルではありません。

    たとえば。
    「善は急げ」←→「急いてはコトをし損じる」
    といったような。どうみても逆を意味する「ことわざ」が、1つや2つではないのです。ほとんどの「ことわざ」は、その「ことわざ」と正反対の「ことわざ」を見つけることもできる、というくらい多いのです。

    もしも厳密な意味で「ことわざ」が、行動するときの道しるべとなるのだとしたら。正反対の「ことわざ」などというものは、あってはならないはずです。

    ですが「ことわざ」は、このような「正反対のものがある」という性質をもっていて当然なのです。なぜなら、その場その場の状況では、「ことわざ」だけに頼って判断を下すということはないからです。

  • 深く知るb普遍的に正しいことは求められていない
  • 上に書いたことを、押しすすめていくと。
    「正反対」のことわざが認められているということは、「正反対」となっている2つの「ことわざ」のうち、どちらを選ぶかは使い手に任されているということでもあります。

    そのことから考えても。
    「ことわざ」があるからといって、それが「絶対的な真理だ」ということはできません。

  • 深く知るc人類に共通して当てはめはまるものも多い
  • 一般的に「ことわざ」は、人類に共通して当てはまるモノです。つまり、どんな言語を操っているかとか、どんな民族のなかで使われているかとか、そういったことはあまり関係ありません。

    中には、ある集まりでしか通用しない「ことわざ」もあります。ですが基本的には、人類に等しく当てはめることができるものです。
  • キーワード:普遍、通有

  • 深く知るdときどき意味が逆転する
  • 「ことわざ」は、不思議なことに「ときどき意味が逆転」します。

    たとえば、「犬も歩けば棒に当たる」というフレーズ。これはもともと
    思いもしなかった良いことに出くわす
    という意味でした。けれども今では、
    考えもしなかったトラブルに直面する
    と解釈する人が多くなっています。
    これは、その意味が180度、完全に入れかわっているといえます。

    ここで書いておきたいのは。
    「使いかたが合っているか間違っているか」とかいったことは、二の次だということです。それよりも大事なことは「誤解して読む人がいるということを知っておいたほうがいい」ということです。

    完全に誤解を避けたいばあい。このような「ことわざ」は用いないほうが賢明だとおもいます。
  • キーワード:直す、手直しする、改める、改変、つづめる、略す、省略
  • レトリックの呼び方
  • 呼び方5
  • ことわざ・諺
  • 参考資料
  • ●『ことわざのレトリック(ニュー・レトリック叢書)』(武田勝昭/海鳴社)
  • 「ことわざ」にかんしてレトリックの視点で書かれている本を、1冊あげるとするならば。この『ことわざのレトリック』をオススメします。「評価的論評」「評価的論拠」といった分類をしているなど、読んでみる価値はあると思います。
  • ●『グラマー・テクスト・レトリック』(安井泉[編]/くろしお出版)
  • この本は「ことわざ」について、平均に近いことが書かれています。なお、この本に載っている「ことわざ」の部分を執筆しているのは、武田勝昭氏です。上に書いた本の著者と同じ方が執筆しています。
  • ●『レトリックの知-意味のアルケオロジーを求めて-』(瀬戸賢一/新曜社)
  • 「ことわざ」に関連した本は、たくさんあります。そして、その内容も大きなズレはありません。ですがこの本には、「ことわざの西洋史」という、なかなかマニアックなことが書いてあります。