このページのさいしょにある引用は、『封神演技』1巻から。
もともと紂王は、文武両道に長けた名君だった。
しかし、絶世の美女である妲己を娶って以来、紂王は変わってしまった。なぜなら、妲己は仙人界でも指折りの仙人だったからだ。紂王は、あっという間に術をかけられ、妲己のあやつり人形にされてしまう…。
そんな中での家臣の上奏が、引用のシーン。税を軽くするように申し立てる家臣にたいする、妲己の返事にあたる
ばっかねーん♡ 米や麦がないのなら 点心(おかし)を食べればいいじゃない♡
という部分が、「引喩」にあたります。
この言葉をを目にしたとき、この言葉の下敷きになっている言葉を連想するはずです。連想してください。連想しないと「引喩」にならないので、ぜひとも連想して下さい。
その連想するフレーズは、知っている人には当たり前の言葉です。民衆が貧困と食料難に陥った際の、マリー・アントワネットの言葉である、「あら、パンがないのならお菓子を食べればいいじゃないの」
というものです。
「本当はこのセリフはアデレード内親王の言葉だ」とか「いや、こんな言葉は誰も言っていない」というあたりの議論は気にしないで下さい。ついでに、「殷周革命を題材にしている『封神演技』の中でフランス革命の時の言葉を引用するのは、時代が逆転している」ということも気にしないで下さい。
大事なのは、これが「引喩」だということです。上にも書いたように、「良く知られた言葉を使い、それに重ねて今の気持ちを述べる」という点が「引喩」にあたります。