首句反復:前の文の最初にあることばを次の文の最初で再び使う
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首句反復 しゅくはんぷく anaphora

『宙(そら)のまにまに』3巻19ページ(柏原麻実/講談社 アフタヌーンKC)
  • 朔(朔ちゃん「先輩も…
  • ずっとこの町で
  • ですものね」
  • 琴塚先輩(フーミン)「え?
  • ええまあ…
  • せまい町だし…」
  • 朔「なんか先輩達って
  • それほど話すわけでも
  • ないのに 互いのことは
  • 知ってますもんね」
  • 同じ町にいて
  • 同じ思い出があって…
  • 同じ時間を生きる……
  • ごく普通の ことだけど………
  • そういうのが時々…
  • すごくうらやましくて…」
-『宙(そら)のまにまに』3巻19ページ(柏原麻実/講談社 アフタヌーンKC)
  • 定義重要度3
  • 首句反復は、前の文の最初にあることばを、次の文の最初でもう一度くり返すレトリックです。つまり、先行する文の文頭で用いられた語句を、次の文の文頭でふたたび使う技法です。

  • 効果

  • 効果1くり返しによって、リズム感のある快い諧調を生む

  • ことばがくり返されることで、リズム感や快い諧調をによる弾みが生まれます。これは、「前辞反復」の重要な点です。
  • キーワード:くり返し、くり返す、重なる、重ねる、たび重なる、反復、重複、ダブる、二重、リズム、快調、節奏、律動、快い、心地よい、快感、テンポ、ペース、弾み、拍子、調子、語調、語勢、口調、音調

  • 効果2詩の中で、文頭に同じことばが来るようにそろえる

  • 「首句反復」が詩で使われるのは、多くのばあい意図的なものになります。詩を作っている時、思いえがかれたようすをそのまま文字にしたらといって、詩にはなりません。「首句反復」のような技法を編みこむことで、詩は成立します。「首句反復」は、詩では定番ともいえるものです。
  • キーワード:詩、詩歌、定番、常套、定石、ありふれる、ありがち

  • 効果3意味を強め、印象に残るようにする

  • 「首句反復」は、強く印象づけるために用いられることもあります。
  • キーワード:強調、強い、強まる、強める、強化、増強

  • 効果4たたみかける

  • つぎつぎと、多くの文を同じことばで始めるのが「首句反復」です。
  • キーワード:たたみかける、漸層的、漸層
  • 使い方
  • 使い方1使い方は、すごく簡単

  • 前の文の、最後にある単語やフレーズ。その単語やフレーズを、次の行の先頭に使う。これが「首句反復」の使い方です。この「首句反復」については、これ以上の説明は必要ないと思います。
  • 注意

  • 注意1使いすぎは禁物

  • 「首句反復」は、それほど多くは使われていないという指摘があります。

    『文章読本 改版』(丸谷才一/中央公論社、口語訳)の書くところによれば、
    これもまた、あまりに詩的な雄弁になりがちなせいか、それとも翻訳臭を嫌ってか、現代日本の散文では敬遠される口である。

    とのことです。つまり、「首句反復」は色々な場面で見かけるレトリックではない、ということになります。

    ですが。
    こういった、ただ言葉を反復するだけのレトリックは。コミックスの中では、ずいぶん見かけるという印象をもっています。
    ただ単純に、ことばをくり返すだけ。なので、強調したいことを手軽に伝えることができるからだと思います。

    このことは、この「首句反復」だけでなく、「 結句反復」などについても言えるでしょう。
  • 例文を見る)
  • 最初の引用は『宙(そら)のまにまに』3巻からです。

    主人公は、朔(ニックネーム:朔ちゃん)。そしてここで彼と話をしているのが、琴塚先輩(ニックネーム:フーミン)。

    朔は、小さい頃から引っ越しと転校が多かった。そのため、どんな町にも表面的にしか関わりを持つことができなかった。

    それに対して、琴塚先輩。彼女は、生まれてからずっと、この町に住んできた。

    そのことについての朔のコメントが、引用の部分です。

    「同じ」という単語が文のさいしょのところに、つづけて出てきます。これが「首句反復」にあたります。このレトリック用語の効果にある「印象に残るようにする」というところを、十分に使っています。
  • 例文を見るその2)
  • 『藍より青し』1巻167ページ(文月晃/白泉社 JET COMICS)
    勝手に逢いに行って
    勝手に押し掛けて

    勝手に呼び出して


    2つ目の引用は『藍より青し』1巻からです。このタイトルは、「あいよりあおし」と読みます。

    主人公は、大学生の「花菱薫」。

    彼のもとに突然現れたのが、「桜庭葵」という女の子。彼女は清楚な美少女。しかも、「薫」のことを想いつづけていた「許嫁」だという。

    しかし「葵」は、なんと財閥の娘。なので時に、「世間知らず」な一面を見せる。
    引用したシーンは、そんな場面の1つ。

    彼女は、乗り換えるための駅(たぶん池袋駅)で、迷子になってしまう。そこで、公衆電話から「薫」に助けを求めた。
    そんな自分を考えて落ち込んでいるのが、問題の部分。
    勝手に逢いに行って
    勝手に押し掛けて

    勝手に呼び出して

    というように、「勝手に〜」という言葉が、それぞれの文のはじめにくり返されています。ここを「首句反復」と考えます。
  • 例文を見るその3)
  • 『R.O.D—READ OR DREAMS—』(倉田英之・綾永らん・スタジオオルフェ・アニプレックス/集英社 ヤングジャンプ・コミックス・ウルトラ)
    • ミシェール「そうよ
    • マギーちゃん フケてるけど
    • まだ19歳だもの!」
    • アニタ「 あ… あう…」sf]]]
    • 「19歳だって
    • 身分証明書が あれば!
    • ミシェール「ないわっ マギーちゃん
    • 無免許
    • 無資格
    • 無芸大食だもの!」
    • アニタ「うわっ
    • ダメ人間っ」


    すぐ上に引用した画像は、『R.O.D—READ OR DREAMS—』1巻から。

    簡単に説明しておくと、「ミシェール」「マギー」「アニタ」の三姉妹が探偵社をやっていて、いろいろな事件に出合う、というものです。

    その『R.O.D』1巻74ページ。アニタが、家に山積みになっている本を「売り払う!」と言った時の会話。
    未成年の「アニタ」は、本を売るためには成人の許可がいるということを言わる。そこで、マギーに許可をもらおうとするのだけれど、マギーは19歳ということに気がついたのが、引用のシーン。

    「無免許」なのと「無資格」なのは、「本を売る」ことの「許可」には関係しそうです。でも、「無芸大食」なのは、関係ないでしょう。
    これなんか、「首句反復」を3回連続させるために、話題と関係ないことを言っているように思えます。

    見方をかえると、これは短い「 頓降法」と考えることもできそうです。
  • レトリックを深く知る

  • 深く知る1「首句反復」と「結句反復」との関係
  • ちょうど、「 結句反復」と逆のものになります。そのため、「首句反復」と「 結句反復」はセットのような関係にあります。

  • 深く知る2「首句反復」の英語訳
  • 『レトリック事典』は、anaphoraという英語に対して、「同一語句反復」という日本語訳を示しています。

    ですが私(サイト運営者)は、あくまでanaphoraは「首句反復」となるべきだと考えます。そして実際に、このページはその考えにもとづいてつくられています。

    anaphoraは、とても参考資料の多い、ありがたいレトリック用語です。そのために、anaphoraを「首句反復」と定義する本は、手元に集まっているだけで十指に余ります。

    このような現状のために、このサイトでは、anaphoraを「首句反復」として扱っていくことにします。
  • レトリックの呼び方
  • 呼び方5
  • 首句反復
  • 呼び方2
  • 頭語反復・文頭反復・同一語句反復
  • 呼び方1
  • アナフォラ・主語反復・頭語畳用
  • 参考資料
  • ●『シェイクスピアのレトリック』(梅田倍男/英宝社)
  • タイトルのとおり、シェイクスピアが使ったレトリックを扱っている本です。なので、当然「首句反復」についても、かなりのページを使って説明してあります。例文が英文でもいいという人にはオススメです。
  • 余談

  • 余談1『藍より青し』の舞台
  • この『藍より青し』の舞台は、たぶん「東武東上線」の沿線をモデルにしているように思います。

    さきほど書いた、「葵」が迷った駅は「東武東上線」の始発駅にあたる「池袋駅」みたいだし。
    走っている電車は、東武の車両っぽいし。
    「薫」の家(アパートの部屋)は新座市にあるようだし。

    そういうわけで、「東武東上線」の沿線が舞台だと思われます。

    私、子供のころ東武線沿線に住んでいたもので、こういったことを書いてしまいがちです。。
    そういえばサイトのどこかで、練馬区に住んでいたとかいうことも書いている気が
    まあ。人物を特定してやろうというヤツが、登場するとは思えないのでいいけど。

  • 余談2タイトルのことわざ
  • 書くまでもないとは思います。ですが念のために書いておくと、この『藍より青し』というタイトルは「青は藍より出でて藍より青し」という「 成句・イディオム」からとられたものです。つまり、「 暗示引用」ということになります。

    ちなみにもともとは、荀子の言葉です。