もう1つの考えかたとしては、「翻訳してみる」というものがあります。どんな外国語に翻訳したとしても同じ単語になるとするなら、それは「同じコトバ」と考えようというわけです。
「
しゃれ」で音が同じになっているのは、たまたまです。だから、それを翻訳したら同じ発音のコトバにはなりません。しかし、「異義復言」(または「
トートロジー」)であれば翻訳しても同じコトバになるはずです。
このページの最初にあげた「ひとり」を、またもや例にしてみます。これを英語に訳すと
“You are not alone.”
“Yes,but...
I am alone.”
と、いずれも“alone”に訳すことができます。
ただし、
翻訳ができるかどうかで、必ずしも判断できるとは限りません。たとえばフランス語で、
Le cur a ses raisons que la raison ne connait point.
というパスカルの名言があります。見てのとおりraison(英語でいうreason)が続けて登場しています。この名言は、ふつう「異義復言」だと理解されています。
ですが、
これを日本語に翻訳するにあたって、「異義復言」らしく訳すのは不可能です。
この文の意味は、だいたい「心は理性が知らない理由を持っている」というものです。そのため、最初の“raison”は「理性」といったことをあらわしていているといえます。ですが、つぎの“raison”は「理由」「理屈」「道理」あたりのことを意味しているということになるのです。