逆対句:「倒置反復法」と「対句」を組み合わせたもの
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逆対句 ぎゃくついく antimetathesis

短編「あるようでない男」『猫の島』128〜129ページ所収(小花美穂/集英社 りぼんマスコットコミックス)
  • 女子A「ちょっと ちょっと——っ
  • 工藤くんが 2年の
  • 山田さよりとつきあい
  • OKしたって〜」
  • 女子B「え゛——っ
  • なにそれ〜っ」
  • 女子C「なにあれ——っ
  • イヤ——っ」
  • 女子D 「ミスマッチすぎ〜っ」
  • —— (ここ2コマ飛ばします)——」
  • 男子A「…やっぱあいつは
  • あるよーで ないヤツだな…」
  • 男子B「うんうん 気の毒に…」
  • ナレーション
  • ——かくして…
  • 運があるようでない
  • 工藤雅深(17)は
  • 運がないようである
  • 山田さより(16)に
  • つかまった——
-短編「あるようでない男」『猫の島』128〜129ページ所収(小花美穂/集英社 りぼんマスコットコミックス)
  • 定義重要度1
  • 逆対句は、「倒置反復法」と「対句」を組み合わせたようなレトリックです。ようするに、第1に「倒置反復法」のように、2つの言葉が「AB−BA」という順番でならんでいる。そして第2に、その「倒置反復法」のような関係になっている言葉の間に、まるで「対句」のように、お互いに「対義語」となる言葉を配置する。このような2つの条件を満たしているものが、「逆対句」です。

  • 効果

  • 効果1——

  • ——
  • キーワード:——
  • 使い方
  • 使い方1——

  • ——
  • 注意

  • 注意1——

  • ——
  • 例文を見る)
  • 引用は、短編「あるようでない男」(『猫の島』所収)

    工藤は、ホントはモテる。それなのに、そんなことには本人は全然気が付かない。

    しかしある日、作者いわく「すんごいおブス」こと山田の誘いで、遊園地へ行く。そこで「おつきあいしてくださいませんか」と言われ、「…うん…いーよ」と答える。そしてその後、つきあい始める。

    なぜ工藤は、「すんごいおブス」こと山田とのつきあいにOKを出したのか? ホントはモテるんだから、もっと美人の女の子だって選べたはずだ。

    その答えは…、「あるようでない男」という短編を読めばわかります(それは、この短編の「オチ」にあたるので、言わないでおきます)。

    ともあれ引用した例文で大事なのは、工藤がどんな女の子が好きなのかということではありません。「逆対句」の例文だという点です。なので、この引用した文を細かく見てみましょう。
  • レトリックを深く知る

  • 深く知る1逆対句の作り方です
  • depsub

  • 深く知るa倒置反復法のような、「AB−BA」という順番になっている(交差的な配語)
  • 引用した文を見てみると、
     - 
     - 

    というように単語が逆転して登場します。「×」のような並びで「」と「」という単語が、あらわれる。これが「 倒置反復法」のような配列です。

  • 深く知るbその間に「対句」のような、「対義語」をおく(対称的な配語)
  • 同じように引用文を見ていくと、「ないようである」という反対の意味のフレーズが置かれています。「あるようでない」の2つは、「対句」のように反対の意味をもったものがセットになっているといえるでしょう。

    (ただし、これは「単語がセットになっている」わけではありません。ですので、厳密な意味での「逆対句」ではないかもしれません)。

  • 深く知るcできあがり
  • このような条件を満たしているので、
    運があるようでない
    運がないようである

    というかたちが成り立っています。

    このように、が両方とも見られる場合を「逆対句」と呼びます。

  • 深く知る2「逆対句」の、くわしい作りかた
  • 「このレトリックの定義」のあたり、ちょっと書きました。短く定義をしたい場合には、「交差的な配語」プラス「対称的な配語」となっているもの、といえます。

    ですがこの「逆対句」は、なかなか分かりづらいレトリックです。なので、ここから下で少しくわしく書いていきます。

    ここで「逆対句」の例とするのは、
    「数学は理性の音楽、音楽は感性の数学」

    という言葉があります。数学者シルベスターの言葉らしいです。これなんかが、「逆対句」の例として挙げられます。

  • 深く知るa倒置反復法のような、「AB−BA」という順番になっている(交差的な配語)
  • まず「数学—音楽」という言葉を「倒置反復法」のように逆転させた形で並べます。すると、
    「数学・音楽——音楽・数学」

    という順番で、2つの言葉が並ぶことになります。

  • 深く知るb間に「対句」のような、「対義語」をおく(対称的な配語)
  • その上で、「理性—感性」という対義語を間に置いておきます。つまり、
    「数学・〈理性〉・音楽——音楽・〈感性〉・数学」

    といった感じになります。

    このような手順で出来上がったものが、
    「数学は理性の音楽、音楽は感性の数学」

    という言葉になるというわけです。

    つまり。上に書いたとの両方を満たしたものが、「逆対句」の例に当たります。
  • レトリックの呼び方
  • 呼び方5
  • 逆対句
  • 参考資料
  • ●『日本語の文体・レトリック辞典』(中村明/東京堂出版)
  • 「逆対句」について、くわしく書いてある本は(私が知る限りでは)1冊もありません。それでも、大きめに扱っている本として、いちおうこれをあげておきます。
  • 余談

  • 余談1「逆対句」の実例は、全然見あたらない
  • しかし「逆対句」なんていう珍しい文が、よく見つかったもんだ。「 倒置反復法」なら時々は見かけるけれど、「逆対句」は、なかなか見あたらない。

    なもんで、ぜひこの部分を使いたかった。そのため、かなりの最終局面からの引用になってしまいました。