警句:短いフレーズで意表をつく考えかたを示す
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警句 けいく aphorism,epigram

『白眼子』88ページ(山岸凉子/潮出版社 希望コミックス)
どうやら
人の幸・不幸は
みな等しく
同じ量らしいんだよ

私ができるのは
せいぜいそれを
そちらか一方に
片寄らせない
ことぐらいだ
-『白眼子』88ページ(山岸凉子/潮出版社 希望コミックス)
  • 定義重要度3
  • 警句は、短いフレーズを使って、意表をつくような巧みな考えかたを示すものです。

  • 効果

  • 効果1あるモノゴトをについて「忠告」したり、「いましめたり」する。

  • 「警句」は、おおくのばあい「忠告」や「教訓」などのために使われます。
  • キーワード:注意、忠告、忠言、教訓、諫言、さとす、いましめる、戒告、勧告、警告

  • 効果2目新しい考えかたを示す

  • だれでも世の中に対しては、「型どおりの」考えかた、というものがあります。それに対して「警句」は、今までの考えかただけではない、べつの視点をあらわすことができます。
  • キーワード:意外、思いがけない、思いもよらない、予想外、新鮮な、新しい、生き生き、奇想天外、真新しい、型破り、奇抜、特異、斬新、視点、着眼点、ピント、角度、目新しい、意表をつく、思いがけない、図らずも

  • 効果3あるモノゴトに関して、するどい考えかたを与える

  • 今までとは違った考えかたでありながら。意表をつくような、巧みな考えかたを与えることができます。それは、すぐに気がつくような「するどい」言いまわしだということもあります。また、あとになってから身にしみてくるような、深みがあるものだということもあります。
  • キーワード:巧みな、巧妙、するどい、シャープな、含蓄、含みのある、するどい

  • 効果4「うまみ」のある表現となる

  • 「警句」では、今までとは違う、新しい考えかたをその場でつくりだすものです。それはつまり、とっさに機転の利いたことを言うことができるということです。ですので、すばやく「警句」を使うことができるヒトは、かなり機転の利くヒトだといえます。
  • キーワード:機智、ウイット、機転

  • 効果5世の中を諷刺することができる

  • この最後のものに限っては。「警句」を使えば必ずしも効果が出る、とは限らないのですが。この「警句」が、世の中の全てに向けられているばあい。この「警句」は、「諷刺」や「皮肉」となることもあります。そして、このように「警句」が用いられるときには。世の中の「真理」や「道理」について、今までとは違った見かたを与えていることになります。
  • キーワード:諷刺、諷する、皮肉、寸評、批判、道理、ことわり、真理
  • 使い方
  • 使い方1今までに誰も思いつかなかったフレーズをつくる

  • この「警句」は、「 格言」などのレトリックと重なりあう部分があります。だけれども「警句」は、「 格言」」などのレトリックとは大きな違いがあります。それが、「今までに使われたことのあるフレーズ」であるかどうか、という点です。「ことわざ」や「故事成語」などは、おおぜいの人々に広まっています。ですが「警句」は、使うヒトがつくりだした、新しいものです。ここが、「警句」の大きな特徴です。
  • キーワード:創作、誕生、作成、つくり出す、創造、創作、独立、一本立ち、独特、ユニーク、独自
  • 使い方2短いフレーズに、大きなコトを含ませる

  • 「警句」では、使うフレーズは短いものとなります。言いかえれば、簡潔である必要があるというわけです。けれども、その短いフレーズからは多くのことが導きだされることになります。たとえば、世の中の「真理」であるとか「道理」だろうとかいった、大きなモノゴトに話が及んでいるばあいがあります。
  • キーワード:手短、簡潔、端的、単刀直入、短い、シンプル、単純
  • 注意

  • 注意1エラそうな言いかたになる

  • 「警句」は、「注意」や「教訓」などに使われます。そのため、「上の立場のヒトが、下の立場のヒトに言う」というカタチになりがちです。つまり、「エラそうな」言いまわしになってしまうのです。
  • 例文を見る)
  • 引用は『白眼子』から。

    主人公は、自分の名前もわからないうちに家族とはぐれてしまった女の子。彼女を拾ってくれた人から「光子」という名前を新しくつけてもらう。

    で、光子を拾ってくれた家には、「白眼子」を呼ばれる男がいた。彼には何らかの超能力がそなわっているようで、どきどき占いみたいなことをしたりする。「白眼子」は、占い師とか易者とか呼ばれるのを嫌っていたようですが。

    で、その「白眼子」がふと口にした言葉が、今回の引用部分です。
    どうやら
    人の幸・不幸は
    みな等しく
    同じ量らしいんだよ

    というところは、短いことばで強い独立性をもっている。そして、物事の真理を鋭くついている。こんなようなものが「警句」といえる表現です。
  • レトリックを深く知る

  • 深く知る1「警句」に近いレトリック
  • はじめにも、ちょっと書いたように。「警句」に近いレトリック用語は、いろいろあります。そして、「アフォリズム(aphorism)」や「エピグラム(epigram)」といったように、日本語と同じように英語にも、似たようなレトリック用語がたくさんあります。

    ようするに。
    レトリックの学者によって、定義がバラバラなのです。ある1つのフレーズを、「警句」にするのか「格言」にするのか。それとも「箴言」にするのか。ぜんぜん、一致するポイントが見あたりません。

    それでも。それに対応する英語をならべてみました。
    これは、「ことわざ」だとか「格言」だとか。そういった用語に対応していそうな、英語を書いてみたものです。この表を使うことで。「ことわざ」だとか「格言」だとかの境界線を、どこに引くか。その判断をするための資料として、役に立つかと思います。
    日本語----当てはまるレトリック用語
    寓言」・たとえ話----parable
    格言」----sentence,maxim
    箴言」----proverb
    ことわざ・諺」----adage,paroemia
    なぞ・「 なぞかけ」-enigma,riddle
    寓話----fable
    警句--aphorism,epigram

    しかし。
    現実には、こんなにキッチリと区別できません。それは、日本語のほうにも英語のほうにも当てはまります。

    ですので、とりあえすの参考のものと考えておいてください。上に書いた表は、「だいたいこんなもの」という程度のものです。間違っても、左に書いた日本語と、右に書いた英語とが、一対一で対応しているわけではありません。というのは、完全にこれらを振り分けることは非常に困難だからです。

    なお、くわしくは「 成句・イディオム」のページを参照してください。

  • 深く知る2「警句」と「格言」との関係
  • 「警句」と、かなり似ているレトリックに「 格言」があります。

    この「 格言」と「警句」という2つのレトリックは、多くの共通点があります。ですので、この2つのレトリックを特別に分けて考えないものもあります。

    ですが、「 格言」と「警句」との大きな違いがあります。それは、つぎの3つです。

  • 深く知るa「警句」は、意外性のあるフレーズである必要がある
  • 「警句」は、ふつうでは思いもよらない、といった意表をついたものであることが求められます。これに対して「 格言」は、意外性のある奇抜なフレーズである必要はありません。

  • 深く知るb「警句」はふつう、短いフレーズになる
  • 「警句」は、短い簡潔なフレーズが使われます。ですが「 格言」は、特に長さに関する制限はありません。簡潔なものもあるし、長いものもあります。

  • 深く知るc警句」は、諷刺や皮肉のために使われる
  • 「警句」の場合には、諷刺や皮肉を含んでいることがポイントとなります。これに対して「 格言」は、諷刺や皮肉といったものは求められません。

  • 深く知る3「奇先法」と「警句」との関係
  • たまに、「奇先法」というレトリック用語が使われることがあります。

    この「奇先法」の関係でいうと、
    短い警句表現のあとに、その説明・理由のあるものが「 奇先法
    短い警句表現だけで、その理由などは書いていないものが「警句」

    というふうに分けることができます。しかし、「短いことばで真理を鋭くつく」という点は、両方とも似たような効果が出ます。
  • レトリックの呼び方
  • 呼び方5
  • 警句・警句法
  • 呼び方3
  • アフォリズム
  • 参考資料
  • ●『日本語の文法・レトリック辞典』(中村明/東京堂出版)
  • 「警句」やら「格言」やらを、どのあたりで区分けするか。このサイトで、そのことを考えるに当たって、いちばん参考にした本です。もちろん、参考となる本です。
  • ●『増補新版 ことばの姿』(外山滋比古/芸術新聞社)
  • 「アフォリズム(≒警句)」について、幅広い考察が書かれています。書き手が、みずから「アフォリズム」を作る場合についても触れられています。