古語法:古くなった言葉をあえて使う
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古語法 こごほう archaism

『School Rumble』1巻110-111ページ(小林尽/講談社 少年マガジンコミックス)
  • 八雲「ねぇ姉さん 何をしたいのか
  • まだわからないんだけど…
  • 邪魔じゃない その弓……」
  • 天満「ん! 気配じゃ 気配を感じる!
  • 八雲殿 拙者 朝餉は遠慮致す!
  • -ここ6コマ省略します-
  • 天満「情熱あふれる
  • 恋文(ラブレター)の出し方…
  • それは矢文!!これよ!」
-『School Rumble』1巻110-111ページ(小林尽/講談社 少年マガジンコミックス)
  • 定義重要度3
  • 古語法は、古くなった言葉をあえて使うレトリックです。つまり、むかしは普通に使われていたけれども、現在では用いられなくなってしまった古めかしい言いまわしを、意図的にすることをいいます。

  • 効果

  • 効果1古めかしいことばで、威厳や神々しさを持たせる

  • 古いことば。そしてその背景にある、昔から長らく引き継がれてきた考えかた。そこには、いかめしい荘重な雰囲気があります。また、雅やかで奥ゆかしいイメージが出ることもあります。さらに時には、それ以上の神々しさをも持ちあわせていることもあります。
  • キーワード:荘重、厳か、いかめしい、厳として、粛として、厳然、尊厳、荘厳、森厳、冷厳、粛然、粛々、物々しい、神々しい、神聖、聖、古風、昔風、いにしえ風、古い趣き、古い時代の趣、典雅、温雅、﨟長けた、ゆかしい、奥ゆかしい、雅やか

  • 効果2古くさい、時代おくれの様子をあらわす

  • しかし。上に書いたことは、反対に古くさい陳腐なものとなることもあります。つまり、時代おくれというマイナスイメージをいだくこともあるということです。
  • キーワード:古い、古くさい、古めかしい、古色、蒼然、かび臭い、ボロ、時代おくれ、旧式

  • 効果3ふざけている・おもしろい感じを出す

  • わりと重要な「古語法」の効果として。「ふざけた感じ」「冗談みたいな感じ」を出すというものがあります。これは、【例文を見る・その1】であげられているのが、絶好の例です。
  • キーワード:ふざける、戯れる、たわける、たわけ、ざれる、じゃらす、おどける、おどけ、道化る、ひょうげる、悪ふざけ、ざれごと、冗談、ジョーク、はしゃぐ

  • 効果4並べられることで、違いを明らかにする(=「対句」や「類義区別」に近い)

  • 現代語と古語とを、近くに並べる。そして、その違いをあざやかに示す。そのことで、現代語と古語との小さな違いを大きくあらわすことができます。(「 対照法・対句」「 類義区別」も、あわせて参照してください)
  • キーワード:対句、相対する、相対、対(たい)、対する、相照らす、対応、対比、対照、コントラスト、対置

  • 効果5並べられることで、リズム感を生みだす(=「平行体」に近い)

  • すぐ上に書いたことに近いものですが。現代語と古語とを近くに並べるということは、同じような意味のことばを近くに置くということです。なので、そこには何らかのリズム感を得ることができます。(「 平行法」も、あわせて参照してください)

  • 効果6控えめなことばを使って、強調することができる

  • 以下は、「 緩叙法(広義の)」」を使う手段として「古語法」を利用するときに得られる効果です。「緩叙法」というのは、「見せかけだけ、弱めた表現する」というレトリックです。たしかに「古語」は、ふだん使わない。これは「弱めた表現」にあたる。でも、これが「見せかけ」だったとき。この使われた「古語」から、いろいろな特別な効果が引き出されます。 (⇒くわしくは「 緩叙法(広義の)」をはじめとするページも、あわせて参照してください)すぐ下に書くように、「古語」を使うと「控えめの表現」になるはずです。ですが実際には、これと正反対の結果となることが多くあります。つまり、「ワザと遠まわしに言う」とか「これみよがしに持って回った表現をとる」ということです。それは、見た目の表現とは逆に「強調」の効果をあげることを意味しています。
  • キーワード:控えめ、少なめ、控える、つつしむ、手控える、はばかる、消極的、弱い、やわらか、穏やか、やんわり、なだらか、やわらか、ソフト、おだやか、やんわり、誇張、大げさ、強調

  • 効果7間接的に表現することになる

  • むかし使われていたような、つまり今ではあんまり用いられなくなったようなことば。そのようなものを、使うということは、ダイレクトな表現をしないでおくということです。そのため、間接的な表現となります。
  • キーワード:間接、遠まわし、婉曲、まわりくどい、持って回った、意味深長、抽象的な、不鮮明、不明瞭、不明確

  • 効果8ホンネを隠していることをあらわす

  • 「現代語」ではなく、まわりくどく「古語」を使うこと。それは時として、何かを隠しているようなニュアンスを持った表現になることがあります。
  • キーワード:底力、隠す、しのばせる、ひそめる、韜晦、隠匿、隠蔽、包みかくす、秘める、秘密にする、伏せる、冷淡、つれない、薄情、冷たい

  • 効果9感情的になっていないことを示す

  • だれしも、とっさに何も考えずに話しをすると。ふだん使っている「現代語」が、口から出てくるものです。そこを、ふだんなら使わない「古語」にしてみる。そのことで、ものに動じていない落ちついた雰囲気を出すことができます。
  • キーワード:冷静、平静、泰然、自若、沈着、従容、動じない、あわてない、クールな、無感情

  • 効果10謙遜をあらわす

  • これは、「古語法」ではイメージしやすい効果だといえます。古くからある表現を使うことで、つつましさを表現する。しきたりに従った表現を用いることで、謙虚さを見せることになります。
  • キーワード:つつしむ、へりくだる、謙遜、下手に出る、つつましい、つつましやか、謙虚、低姿勢、頭が低い、腰が低い

  • 効果11皮肉をあらわす

  • 考えられないほど、ヘンに「古語」を使うと。いってみれば、相手を見くだしたような。もしくは、遠まわしに嫌味をあらわすようなことにもなります。
  • キーワード:皮肉、当てつける、当てこする、アイロニー、イロニー、嫌味を言う、いやみ、物言い、言いがかり、いちゃもん、苦情、難癖、論難、咎め、咎め立て、とっちめる、なじる、面詰、難詰、難じる、非難する、当てつける、当てつけ、当てこする、面当て、いやみ、嫌気、いやらしい、飽き飽き、うんざり、いとわしい、疎ましい、気疎い、忌まわしい、いけ好かない、気にくわない、気障り、耳障り、聞き苦しい、胸が悪い、苦々しい、虫が好かない、憎い、憎らしい、憎たらしい、恨めしい
  • 使い方
  • 使い方1「古語」を使う

  • むかしは使われていた。でも、いまはほとんど使われていない。そんなことばを使えば、「古語法」はできあがります。これが、単純で手軽で、しかも得られる効果も大きい方法です。なのでまず、この方法が一番手となります。ふつうは、モノゴトをあらわす名詞のうちで、古い時代のモノを探すことになるでしょう。
  • キーワード:過去、昔、昔日、往時、往古、千古、既往、旧時、ひと昔、大昔、いにしえ、当時、時分、元(もと)、以前、一頃、一時、かつて、過ぐる、使われなくなった、古語、古典語
  • 使い方2古文との文法の違いを利用することもできる

  • たとえば、係り結びを出してくるとか。ほかには、活用の違いを利用するとか。単に、モノそれ自体を指ししめす単語を古いことばにするだけが、「古語法」ではありません。むかしの「古文の文法」を利用することでも、「古語法」をつくりだすことができます。
  • キーワード:古文、古典、古典文学、古典主義、古典的名作、擬古文、擬古体
  • 使い方3用いる文字や仮名づかいの違いでも「古語法」

  • むかし使っていた漢字は、もっとゴチャゴチャっとしたものでした。「虫」を「蟲」と書くだけで、なんとなく古い時代のイメージがわいてきます。また、仮名づかいを「旧仮名づかい」にするのも、おなじく歴史を感じさせることができるものです。このようなものも使うことができます。
  • 注意

  • 注意1「ウソの古語」を捏造しない。

  • 「古語法」で使われるのは、むかしのことばです。そして、いまわたしたちが日ごろ使っているのは、現代語です。となると、どうしても「まちがった古語」ができてしまったりするのです。

  • 注意2でも、「100%の古文」もツラい

  • ですがまあ、100%の古文を使うわけにもいきません。100%の古文を見たら、学生時代の古文の授業を思い出します。おそらく、そこは艱難辛苦や阿鼻叫喚だけの無間地獄だったはずです。そんなヤバイ経験を読み手に思い出させるのは、ひかえておくのが得策でしょう。
  • 例文を見る)
  • 例文は『School Rumble』1巻から。

    主人公は、塚本天満。高校2年生。

    彼女は、烏丸大路というクラスメイトに恋をしている。どうしても、烏丸くんにラブレターを渡したい。

    そこでまず天満は、ラブレターを烏丸の下駄箱に入れておいて、読んでもらうという作戦を行う。しかし「天満が自分の名前を書き忘れた」という理由で、作戦1号は失敗に終わる。

    で次に、作戦2号を実行しようとしているのが、引用の場面。
    ん! 気配じゃ
    気配を感じる!
    八雲殿 拙者
    朝餉は遠慮致す!

    と言っている。けれども、この中には古くなって現代では使わなくなった言葉が用いられている。たとえば「拙者」とか「朝餉」とか。あと「?致す」という言葉も古めかしい感じがする。

    で、ダメ押しとして、
    情熱あふれる
    恋文(ラブレター)の出し方…
    それは矢文!!

    と、「矢文」という言葉が登場する。これも現在ではふつう使わない。しかも私(サイト制作者)の使っているATOK12(古!)には、「矢文」が辞書の中にない。したがって漢字変換で出てこない。そのことからもわかるように、これは「古語」なのです。

    そういったわけで。これは、典型的な「古語法」となっています。

    ちなみに「ふざけた感じを表現する」ということができているます。ですので「効果」のほうも、バッチリ基本どおりの「古語法」のルールにのっとっています。
  • 例文を見るその2)
  • 『ラグーンエンジン』1巻151ページ(杉崎ゆきる/角川書店 あすかコミックス)
    • 等軍焔(らぐん えん)
    • ある日、おれのクツ箱に
    • 「 ラブレターが入っていた。」
    • -じゃなくて、
    • 恋文が入っていた。」


    2つめの引用は、『ラグーンエンジン』1巻から。

    主人公は、「等軍焔(らぐん えん)」と「陣(じん)」の兄弟。

    「焔(えん)」と「陣(じん)」は、2人で「凶(マガ)」というものを、祓うことを家業としている。「凶(マガ)」というのは、悪霊とか妖魔とかいったもののこと。

    で。
    右のシーンは、ある日のできごと。そして、それにたいする「等軍焔(らぐん えん)」のモノローグです。

    「等軍焔(らぐん えん)」が通っている、学校のクツ箱。そこに、あったもの。それは、
    「ラブレターが入っていた。」
    --じゃなくて、
    恋文が入っていた。」

    と書かれています。

    つまり。
    一度「ラブレター」という「現代語」っぽい言いかたをしておきながら。すぐに、それを直して「恋文」とコメントしている。

    こうすることによって。「並べて書くことで違いをハッキリさせる」という効果が、よく出ています。

    なお。
    「等軍焔(らぐん えん)」の家業が、「凶(マガ)」というものを祓うことだということ。つまり、「古くからある、いわくいわれのあるモノゴト」を相手にしているものだということ。

    そこからして。この「恋文」は、「凶(マガ)」と呼ばれるものたちに近いヒトによって書かれたものなんだろう。…っていうのも暗示していたりします。
  • レトリックを深く知る

  • 深く知る1古語法の作りかた
  • 「古語法」でいうところの「古語」。それはふつう、次の3つのものをいいます。
    • 昔と今とで意味が違う「現代語」と「ことばのカタチ」は同じだけれども、その「あらわしている意味の内容」がちがうというもの。
    • 昔と今とで単語が違う「現代語」と「意味の内容」は同じだけれども、それを「あらわしていることばのカタチ」が違うというもの。
    • 廃語や死語「もはや、いまではその概念そのものがなくなった」などといったような事情で、「現代語」としては、使われることがなくなっているもの。(これは、言いかえると「廃語」とか「死語」に当たります)



    そして、さらに。
    これに付けくわえるかんじで、プラスされることがあるものとして。
    • 広い意味での古語「現代語」と、ほとんど同じ意味で昔も使われていたもの。(たしかに、昔のヒトが使っていたという意味では「古語」ともいえる)

    といった。これも「古語」に含めることもあります。

    こういったわけで「古語」は、合計4つに分けることができます。ですので、これより下では、それぞれ詳しく見ていくことにします。

  • 深く知るa現代とは「ことばの意味」が違うタイプ=古今異義語
  • まずはじめに。
    現代語
    古語
    あらわしたいと考えている対象
    それをあらわすために使っていたことば
    灯台


    たしかに現代とは、「ことばのカタチ」だけは同じ。でも、あらわしている内容が違う。つまり、単語の意味が別のモノになっている。そんなものを見ていきます。

    右にある表。ここは、2つの絵が並んでいます。そして、その下には「灯台」と書いてあります。

    この表が、なにを示したいのかというと。

    現代語では、「灯台」と言ったばあいには、左の建物をいう。船が安全に行ったり来たりできるように光をともす。そのための建物が、現代語でいう「灯台」です。

    しかし古語で、「灯台(燈台)」ということばを使ったばあい。それは、部屋の中で使う照明器具をさします。どうもカタチには、いろいろな種類があったらしいのですが。とにかく夜に、部屋の中を明るくするために、油をいれる。そして、その油から火がつくようになっている。これが、古語でいう「灯台」です。

    つまり、「灯台」という単語。これは、たしかに見た目のカタチは、現代語も古語も同じになっている。でも、そのことばによって、あらわそうとしている内容は、ぜんぜん違う。そういうことになるわけです。

    そのため。もしも、「灯台」ということばを、室内の照明器具の意味で使ったばあい。いいかえれば、上の表のうちで「右」側の画像があらわしているものの内容を表現するために用いたばあい。それは、現代語からは、離れた使いかたということになります。

    そして。そのため、そのときの「灯台」ということばの使いかたは、「古語法」だとされるわけです。

  • 深く知るb現代とは「ことばのカタチ」が違うタイプ
  • つぎに。
    現代語
    古語
    あらわしたいと考えている対象
    それをあらわすために使っていたことば
    ごはん
    固粥


    現代とは、同じことを表現するのに「ことばのカタチ」がちがうタイプ。これについて、見ていくことにします。

    右の表にある、イラスト。これを(現代語で)なんと呼ぶのかは、だれでもわかります。「ごはん」といいます。念のため書いておくと、今回ここで問題とするのは、「蒸した米粒」についての呼びかたです。「食事」という意味で、ときどき使う「ごはん」ということは、考えに入れないでください。

    で、その現代語で「ごはん」と呼ばれているモノ。これが、「古語」では何という名前をもっていたのかというと、それは「固粥(かたがゆ)」というものです。

    つまり、右のイラストのモノは、現代語と古語とで呼びかたが違っています。

    そのため。もしも、イラストのモノを呼ぶときに「固粥(かたがゆ)」ということばを使ったばあい。それは、現代語からは、離れた使いかたということになります。

    そして。そのときの「固粥(かたがゆ)」ということばは、「古語」だとされるわけです。

  • 深く知るc「現代語」としては、使われることがなくなっているもの
  • 3番目として。「廃語」とか「死語」とか呼ばれるもの。これらについても「古語」と呼ばれることがあります。

    「廃語」「死語」というのと、「古語」とでニュアンスに違いがあるとするなら。「廃語」「死語」ということばのほうが、「使われなくなって、それほど時代が経っていない」ということがいえます。

    たとえば、「あたり前田のクラッカー!」なることば。これは、たしかに「死語」です。けれども「古語」といういうのとは、ちょっとイメージが離れています。それがつまり、「死語」と「古語」とのあいだにある、「差」だということになります。

    なお。「廃語」や「死語」といった用語には、上のについても含めることもあります。つまり、ほかの単語が使われるようになったことで、使命を終えてなくなってしまったことば。これについても「廃語」とか「死語」と呼ばれることもあります。

    それと。完全に「現代では使われなくなったことば」というのを、考えたばあい。それは、「枕詞」「序詞」のようなものに限られてきます。(⇒くわしくは「死語・廃語」「 掛詞」「[ 枕詞」「 序詞」も、あわせて参照してください)
  • キーワード:廃語、死語、掛詞(懸詞)、縁語、枕詞、序詞

  • 深く知るdさいごに。
    現代語
    古語
    あらわしたいと考えている対象
    もも(桃)


現代の世のなかでも、むかしとほとんど同じ意味で使われていることば。これも、ばあいによっては「古語」に含めることがあります。

右の例を見てみると。右のイラストは、もちろん現代語では「もも(桃)」と呼びます。

では、むかしは何という名前だったかというと。やっぱり、いつの時代でも日本では「もも(桃)」というものでした。『古事記』にも「もも」が出てくるので、「もも」は大昔から「もも」ということばで呼びあらわされていたはずです。この「もも」は、イザナギさんが魔除け(?)の武器として、3つほど投げつけたりしています。

これは。
とくべつ「古語」であると、意識することがないのがほとんどです。ですが、広い意味では「古語」というカテゴリに入ることになります。

昔のヒトも使っていた。いいかえれば、古い時代「でも」使われていた。そのような理由から、広い意味では「古語」の一員に加えることがあります。

  • 深く知る2「古語」が使われる場面
  • 「ことわざ」、「箴言」などのなかで、「ことわざ」とか「成句」といった言いまわしの決まったものは。おおくのばあい、むかしから使われています。そのため、古い時代のことばが残っていることがあります。そういえば、「灯台、もと暗し」という諺がありますが。じつは、ここでいう「灯台」というのは「部屋で使う照明器具」のことを指しています。(⇒くわしくは「 ことわざ・諺」「 箴言」「慣用句「 成句・イディオム」」ページも、あわせて参照してください)

  • 深く知るa「地域方言」のなかで=方言周圏論
  • ふつうに「方言」といったばあい、その土地ごとの「訛り」なんかのことをいいます。学問としてはこれを「地域方言」と、呼んでいます。

    で。
    この「地域方言」のなかには。古い時代に使われていたことばが、残っていたりすることがよくある。つまり「古語」といわれるものが、中央から離れた土地の「方言」として使われていたりする。そういったことが、(それが理論といえるほどに)多い。この現象のことを、「方言周圏論」といいます。

    「方言周圏論(方言周圏説)」について、くわしいことは。「地域方言」のページのほうで、書く予定にしています。ですがまだ、このサイトには「地域方言」のページがありません。ですので申しわけありませんが、もうしばらくお待ち下さい。

  • 深く知るb「社会方言」のなかで
  • 学問の上としては、「方言」という用語には。「地域方言」のほかに、もう1つ違ったカタチものが含まれます。これを「社会方言」と呼んでいます。

    「社会方言」というのは、社会のグループごとに違った言葉づかいをしていることをいいます。

    たとえば「上流階級」が使っていることばと、「労働者階級」が話していることば。この2つには、違いがあります。また、「お役所ことば」とか「若者ことば」といったもの。たしかに「お役所」や「若者」のなかでは、ほかの人たちとは少し(かなり?)違った、会話のやりとりをします。こういったものを、「社会方言」といいます。

    とくに、「古語」が残っていやすいところ。つまり、「社会方言」のなかに「古語」が、消えずにとどまっていることが多いグループ。

    1つは、「卑語」と呼ばれることばのグループ。つまり、相手をオドしたりする汚らしいことばを使うのを得意とした集まり。このなかには、わりと「古語」が残っています。

    そしてもう1つは、かなりの上流社会の人たちのグループ。とくに、皇居に住んでいる方々に親しいメンバーたち。こちらにもまた、いろいろな「古語」が見受けられたりします。
  • レトリックの呼び方
  • 呼び方5
  • 古語法
  • 呼び方2
  • 古語・古典語・古文体・古風体・擬古体
  • 別の意味で使われるとき
  • ●せまい意味で、「古語」ということばが使われるとき
  • ふつうに「古語」というと、「むかしの人が使っていた、古いことば」という意味です。ですが、国語学の学問上では、この「古語」という用語。これが、もうちょっと厳密なことをあらわすのに使われます。

    なにかというと。

    「古事記」だとか「万葉集」だとか。そういった、日本の奈良時代(つまり上代)に使われたことば。ようするに、「記紀」「万葉集」を読解するのに知識として必要となってくるような、とくべつなことば。

    こういったものを、せまい意味で「古語」といいます。このあたりについては、『国語学大辞典』(国語学会[編]/東京堂出版)に、すこし多めの説明が書いてあります。
  • 参考資料
  • ●『日本語解釈活用事典』(渡辺富美雄・村石昭三・加部佐助[共編著]/ぎょうせい)
  • 「事典」としては、かなりの量を使って説明をしている本です。国語学のほうで解説してある本としては、まずまず平均的で、無難なものだと思います。
  • ●『(研究社)新英語学辞典』(大塚高信・中島文雄[監修]/研究社)
  • 上にあげた本だけだと、国語学にばかり偏ってしまうので。英語学のほうからの意見を聴く本として、あげておきます。
  • ●『文章読本 改版 (中公文庫 ま17-9)』(丸谷才一/中央公論社)
  • 著者の丸谷才一がいう「古語」というのは、せまい意味での「古語」です。いいかえると、「古事記」や「万葉集」を読むのに必要となることば、それが丸谷才一がアタマに置いている「古語」です。

    それにたいして、引きあいに出されている谷崎潤一郎。「古語」ということばを谷崎潤一郎が書いたとき、その考えの中心にあるもの。それは、広い意味での「古語」です。つまり、明治時代よりも前のことば。それが、谷崎潤一郎が「古語」ということばを使ったときに、前提としているものです。[[btr]]もちろん。どちらが正しいとかいうことは、けっしてありません。
  • 余談

  • 余談1かつて、この世に「ラブレターを矢文」で送ることがあったのか?
  • これは『School Rumble』にたいしての、ツッコミ。

    現在はもちろんのことだけれども。
    昔でも「ラブレターを矢文で届ける」ということはしていなかったと思う。

    たとえば、『なんて素敵にジャパネスク』(山内直美・氷室冴子/白泉社 花とゆめCOMICS)という作品があります。で、この『なんて素敵にジャパネスク』に登場する貴族たちは、下女に恋文の和歌をたくしている。で、その下女に届けてもらっているのです。

    やっぱり、ラブレターに矢文を使うのは、今も昔もないことだと思う。まあ、そこで笑いを取ろうとしているのだけれども。