過大誇張法:極端に拡大して大きく表現する
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過大誇張法 かだいこちょうほう auxesis

『R.O.D-READ OR DREAM-』1巻10ページ(倉田英之・綾永らん・スタジオオルフェ・アニプレック/集英社 ヤングジャンップ・コミックス・ウルトラ)
  • ミシェール「あれが次女の
  • マギーちゃん フレーズは
  • “大きい!強い!鈍い!”です
  • その証拠に……」
(マギーの頭の上に鳥がとまる。
でもマギーは気がつかない。)
  • ミシェール「ほらっ 本に熱中していると
  • 隣りで核戦争が起きても
  • 気がつきません」
  • アニタ「隣りで起きるか
  • そんなもんっ」-『R.O.D-READ OR DREAM-』1巻10ページ(倉田英之・綾永らん・スタジオオルフェ・アニプレック/集英社 ヤングジャンップ・コミックス・ウルトラ)
  • 定義重要度2
  • 過大誇張法は、ものごとを極端に拡大して大きく表現するレトリックです。事実や認識を大きい方向に誇張する「誇張法」の一種です。言いかえれば、「前向き」もしくは「下向き」に増加させてあらわす誇張法です。

  • 効果

  • 効果1--

  • --
  • 使い方
  • 使い方1事実以上に大きな表現をする

  • 必要以上に大きく表現する。つまり、ものごとの程度を高く強調するものです。
  • キーワード:大きい、でかい、でかでか、巨大、多い、多く、多分、たんまり、どっさり、ふんだん、莫大、多大、甚大、絶大、重大、高い、優れている、優等、高度、高等、高級
  • 注意

  • 注意1あまりに大げさすぎると、感情移入することができない

  • あまりに大げさすぎると、受け手(読み手・聞き手)は、しらけてしまいます。そうなると、受け手は感情移入することができなくなってしまいます
  • キーワード:仰々しい、やかましい、大げさ、誇張
  • 例文を見る)
  • 引用は『R.O.D-READ OR DREAM-』1巻から。

    ここは香港。とある三姉妹が「紙姉妹探偵社」という仕事をしている。

    長女のミシェールが言うところによると、
    捜索・修復
    翻訳・取引の交渉
    鑑定・真贋判別
    その他 本に関する
    事ならなんでも
    お引き受けします (9ページ)

    で、そのメンバーを紹介していく中で、次女のマギーのことにふれる。それが引用のシーンです。

    たしかに、頭に鳥がとまっても、無反応。本に熱中しています。ですが、それを理由に、
    隣りで核戦争が
    起きても

    というのは、ありえません。「鈍い」ということを強調するために、「隣で核戦争が起きても」というのは、おおげさです。

    ですが、「鈍い」とか「本に熱中すると周りで何起きても気づかない」ということを強調して、「隣で核戦争が起きても」と言っているわけです。なので、これは「過大誇張法」にあたります。
  • レトリックを深く知る

  • 深く知る1「のび太」の涙は「過大誇張法」だけれど…
  • 『ドラえもん』に出てくる「のび太」の「涙」は「過大誇張法」です。いくら大泣きしても、ドラえもんが流れるほどの涙は出ません。

    ですが、このサイトでは、そういった「イラスト」の部分での「レトリック」については扱いません。これは、そこにまでは手が及ばない、というサイト作成者の限界によるものです。

  • 深く知る2「過大誇張法」と「過小誇張法」との区別
  • 「隣で核戦争が起きても」というのは、どちらかといえば「過大誇張法」になじみやすいものです。しかし、「過大誇張法」なのか「 過小誇張法」なのか、区別ができない例も多くあります。

    つまり、世の中には「大きい」と「小さい」という尺度では表せないものもあります。そのため、この「過大誇張法」と「過小誇張法」とは、原理的には同じものといえます。

    また実際には、「過小誇張法」が使われることは少なく、圧倒的に「過大誇張法」のほうが多く登場します。

    そのため、あえて「過小誇張法」を区別する必要はない、とする人もいます。たとえば佐藤信夫先生は『レトリック感覚(講談社学術文庫 1029)』で、そのような立場をとっています。

  • 深く知る3「無理誇張」について
  • ところで。

    「無理誇張(adynaton)」というレトリック用語があります。だけれども私(サイト作成者)には、ほかの「誇張法」との違いがよくわからなくて、困っています。

    ようするに「無理誇張」は、不可能なことを引き合いに出してきて、あり得ないということを強調する表現です。

    この「無理誇張」が別名impossibileと呼ばれるのもそのためです。なお、この別名はラテン語なので、けっしてimpossibleをタイプミスしたものではありません。

    話をもとに戻して。

    「あり得ないことを引き合いに出して」っていうところに、ひっかかりを感じるのです。だって、ほかの「過大誇張法」だって「過小誇張法」だって、「あり得ないことを引き合いに出して」いる。[[ve]]まあ、必ずしも「あり得ない」ものでなければならないという決まりはないかもしれない。でも実際のところ「誇張法」には、「あり得ない」ものが例に出されるのです。

    ありがたいことに、引用した『R.O.D-READ OR DREAM-』の文章で、アニタが証言しています。
    隣りで 起きるか そんなもんっ

    というアニタの言ったセリフ。
    そうなのです。「隣で核戦争が起きること」は、ちっともリアルでないのです。それこそ「あり得ない」ことなのです。そして、「あり得ない」ことだからこそ「過大誇張法」としてのレトリックになっていると思うのです。[br]]というわけで、私(サイト作成者)は「無理誇張」というレトリック用語が、いまいち把握できかねます。

    なお。
    念のため書いておきますが、adynatonというレトリック用語は、それほどマイナーなものではありません。「Wikipedia」にも載っている、ふつうのレトリック用語です。
     * 

    …と、書いてみた。
    そのあと、『文学修辞学』(H・ラウスベルク[著]、萬澤正美[訳]/東京都立大学出版会)という本に、「無理誇張」について少し解説がありました。なので、ちょっと書きくわえます。

    どうも、この本によると「無理誇張」というのは、
    「誇張法」というよりは、むしろ「迂言法」に近いもの

    とのことです。

    つまり、不可能であることを「回りくどく」伝える。この「回りくどく」というところが、この「無理誇張」のポイントのようです。

    もちろん、最終的には「無理だよ!」というメッセージが到達させるのが目的のものです。それは、たしかです。ですが、そのための手段こそが「無理誇張」の特徴のようです。

    つまり、「回りくどく」というか。もしくは、「ワザワザほのめかして」といいうか。とにかく、直接ストレートに言わないで伝えるという「迂言法」のもっている性質こそが、「無理誇張」の注目しているポイントのようです。

    (※注:この本では「adynaton」のことを、「無理誇張」ではなく、「あり得ないことの迂言法」と呼んでいます。114ページ。)
  • レトリックの呼び方
  • 呼び方5
  • 過大誇張法
  • 呼び方2
  • 拡大叙法
  • 参考資料
  • ●『レトリック辞典』(野内良三/国書刊行会)
  • あまり長い解説が書いてあるわけでは、ありません。ですが、日本語で書かれている本で一番くわしいのは、たぶんこの本です
  • ●『レトリック感覚(講談社学術文庫 1029)』(佐藤信夫/講談社)
  • あと、少し「過少誇張法」が説明がされている本として、こちらをあげることができます。