つぎに。
「連辞省略」と「要語省略」の違い-フランス語のばあい。
これは、アタマを悩ませます。
とりあえず。
「接続詞の省略」については、フランス語でも「連辞省略」としておくことができます。
たとえば、『レトリック(文庫クセジュ 833)』(オリヴィエ・ルブール[著]、佐野泰雄[訳]/白水社) は「接続辞省略(=連辞省略)」について。
接続の言葉(「……なので、ちょうど……する時に(comme)」「ところで(or)」「したがって(donc)」「しかしながら(cependanr)」など)に関わる省略法である。
としています。
とすると。フランス語の「前置詞」を省略するのが「要語省略」かと思いきや。そうはなっていないのが、やっかいなのです。
たとえば、『ラルース言語学用語辞典』(J・デュボワほか[著]、伊藤晃・木下光一・福井芳男・丸山圭三郎・泉邦寿・小野正敦・戸村幸一[編訳]/大修館書店)。
例えば,sur le plan formeという表現は,従位詞が欠けているので連結辞省略となる。よい慣用ではsur le plan de la forme「形の面では」と言うことを求めるからである。
とまあ。前置詞「de」の省略については「連結辞省略(=連辞省略)」だといっている。
だとすると。
「要語省略」のほうは、どのように扱っているのかというと。
やや、回りくどくなりますが、
いくつか文がならんでいて、その文に同じことばが何度も出てくる。そのとき、ダブって出てくることになることばを、いちばん最初の文で1回だけ使うだけにして、2番目以降の文では省略する。
といったもの。これを「要語省略」とします。
またもや『ラルース言語学辞典』を見てみると、「簡約語法(要語省略)」のあたりには、こんな例文が出ています。
例:Les mains cessent de prendre, les bras d'agir, les jambes de marcher. 「手は取ることをやめる,腕は行動することを,足は歩むことを」(ラ・フォンテーヌ)。
見てのとおり。もしも文法どおりならば、何度も「やめる」という単語が出てきたはずです。だけれども、それを文字として表現しなかった。このようなものを、フランス語系では「要語省略」と考えるのがふつうです。
(なお。このニュアンスでは「簡約語法」という翻訳をすることが多い。)