引用したところは、話の流れとは全く関係のない部分です。
クラスメートの「テン」は、自分の父親が入院したことから貧乏生活をおくっている。そしてそのことを、なぜか、山上憶良の「貧窮問答歌」にたくして語っている。そういう、「ギャグ」なのか「シリアス」なのかよくわからない、4コママンガです。
で。
そこに書かれている「貧窮問答歌」(山上憶良)の部分が、「長歌」というわけです。
なのですが、引用した例文には省略が多い。なので、「長歌」と見きわめるのが難しい。ということで、「貧窮問答歌」の「答え」に当たる部分を、省略なしで書いておきます。もう少しキチンと説明すると、「貧窮問答歌」は、その名前のとおり、「問い」の部分と「答え」の部分に分かれています。そのうちの、「答え」の部分を全文書き出しておくということです。天地は 広しといへど 吾が為は 狭(さ)くやなりぬる 日月は 明しといへど 吾が為は 照りや給はぬ 人皆か 吾のみや然る わくらばに 人とはあるを 人並に 吾も作れるを 綿も無き 布肩衣の 海松(みる)の如 われけ さがれる 裾(かかふ)褄のみ 肩にうち懸け 伏盧の 盧(まげいほ)の内に 直土(ひたつち)に 藁(わら)解き敷きて 父母は 枕の方に 妻子ど もは 足(あと)の方に 囲み居て 憂へ吟(さまよ)ひ 竃(かまど)には 火気(ほげ)ふき立てず 甑(こし)には 蜘蛛の巣懸きて 飯炊く 事も忘れて 鶴(ぬえ)鳥の 哺吟(のどよ)ひ居るに いとのきて 短き物を 端裁(はしき)ると 云へるが如く 楚取(しもと)る 里長が声は 寝屋戸まで 来立ち呼ばひぬ かくばかり 術無きものか 世間(よのなか)の道
以上、原文は『万葉集』の巻五、訳は『古代詩の表現(シリーズ・古代の文学7)』(古代文学会[編]/武蔵野書院)によりました。
いや。
意味をわかってもらおうと思って、「貧窮問答歌」を書いたわけではありません。ただ、「五・七」のくり返しの後、最後に「七」の音が置かれるということを確認してほしかっただけです。「世の中の道」は、「よのなかのみち」で「七」音になっているので、典型的な「長歌」だということが確認してもらえれば、それで十分です。