文字鎖・しりとり:現代では「しりとり」と呼ぶゲーム
TOPページ文字鎖・しりとり
関連レトリック文字鎖・しりとり

文字鎖・しりとり もじぐさり・しりとり word chain

『FREE COLLARS KINGDOM』1巻210ページ(藤真拓哉/講談社 マガジンZKC0119)
シャムという女。
  • シャム「あななたちー しりとりよー」
  • アー子「じゃあ 最初は 誰から…」
  • シャム「ま●がの森!!!
  • アー子「…りんご
  • イー子「ゴースト
  • シャム「と●のあな!!
  • アー子「…なすび
  • イー子「ビラ」(配るヤツ)
  • シャム「らし●ばん!!!
  • アー子「…シャム様の負」
  • イー子「負けを認め」
  • シャム「またふやけて ますわぁ!!!
  • いやです わあああ!!!」
-『FREE COLLARS KINGDOM』1巻210ページ(藤真拓哉/講談社 マガジンZKC0119)
  • 定義重要度2
  • 文字鎖・しりとりは、現代では「しりとり」と呼ぶのが普通の、誰でも知っているゲームです。

  • 効果

  • 効果1だれでも楽しむことができ、特別な知識がいらない

  • ルールがカンタンなので、小さな子供でも楽しむことができる遊びです。特別な知識は必要ありません。
  • キーワード:ルールがカンタン、手軽、単純、シンプル、やさしい、容易、平易、子供、幼児

  • 効果2道具が必要ないし、場所も問わないでできる

  • しりとりは、遊ぶときに道具はいりません。また、場所を問わずどこでも遊ぶことができます。
  • キーワード:どこでも、場所を問わない

  • 効果3好みに応じて、複雑なものにすることもできる

  • たとえば、下のほうにあるは「鉄道の駅の名前」で、しりとりを作っています。このように、何か制限を加えることで楽しくすることができます。
  • キーワード:制限、限る、限定、複雑、制約、コントロール
  • 使い方
  • 使い方1「しりとり」の遊びかたなんか、書くまでもないとは思うけれど

  • このゲームのルールは、説明するまでもないのですが、いちおう書いておきましょう。一般的には、前の人が言った単語のなかで、最後の音にあたるものを、次の人が言う単語での最初の音に使う。で、最後の音が「ん」になってしまうことばを言ったら負け。そういったものです。
  • 例文を見る)
  • 引用した画像を見てみることにしましょう。

    引用は、『FREE COLLARS KINGDOM』1巻からです。

    これは、オマケのページにあたるものです。なので、作品の本筋とはあまり関連がありません。ですが、簡単に書いておくと次のようになります。

    主人公は「シアン」という猫。東池袋をテリトリーにしている「フリーカラーズ」という猫のグループに所属している。

    これに対して、西池袋を支配しているのが「シャム」という猫とその一派。
    で、当然のごとく、2つのグループは対立関係にあります。

    今回引用したのは、「シャム」と、その部下にあたる「アー子」と「イー子」です。で、3匹で「しりとり」をしています。ですが、「シャム」が言うことばは、ちょっと風変わりです。
    ま●がの森!!!
    と●のあな!!
    らし●ばん!!!

    といった具合です。西池袋には、そういった関係の店がたくさんあります。なので「シャム」は、そういった店の名前にこだわって、「しりとり」をします。結果、「らし●ばん」の最後が「ん」なので負け。
  • レトリックを深く知る

  • 深く知る1「しりとり」の歴史--「文字鎖」の時代
  • まず、この「しりとり」というページを読むことになっているかたは、みなさん思われるでしょう。
    …こんなもの、「レトリック」なのか?

    それは、私(サイト作成者)にも疑問です。

    けれども「しりとり」の「先祖」に当たるものは、「文字鎖」という名前で中世の昔からおこなわれている、由緒正しいものです。『古典文学レトリック事典』(國文学編集部[編]/學燈社)などの本を参考にして書いていくと、つぎのようになります。

    昔から行われていた「文字鎖」は、現在の「しりとり」とは、少し違いがあります。
    それでは「文字鎖」とはどういうものかというと、
    「源氏のすぐれてやさしきは、はかなく消えし桐壺よ、余所(よそ)にも見えし帚木(ははきぎ)は、われからねになく空蝉や、やすらふみちの夕顔は、若紫の色ごとに、匂ふ末摘花(すえつむはな)の香に、錦と見えし紅葉賀、かぜをいとひし花宴、むすびかけたる葵草賢木におく霜は、花散里のほとゝぎす、須磨のうらみに沈みにし、忍びて通ふ明石潟、たのめしあとの澪標(みをつくし)、しげき蓬生(よもぎう)つゆ深み、水に関谷の影うつし、知らぬ絵合おもしろや--(長いので省略して)--契りのはては蜻蛉(かげろう)を、おのがつまひの手習は、はかなかりける夢浮橋。」

    というものです。

    念のために説明しておくと、こうなります。まず、「源氏のすぐれてやさしきは」の最後にあたる「は」の文字が、次の「はかなく消えし桐壺よ」という文の先頭に出てくる。その「はかなく消えし桐壺よ」の終わりにある「よ」が、次の「余所(よそ)にも見えし帚木(ははきぎ)は」の最初に出てくる。以下略。

    とまあ、そんな感じで、源氏物語の各巻を思い出すのに役立っていた「文字鎖」です。音節の数えてみればわかりますが、「7・5、7・5、7・5」というリズムがあるので、覚えやすいようにできています。

  • 深く知る2「しりとり」の歴史--江戸時代の「しりとり」
  • 上に書いたように、「文字鎖」というものが中世に行われていました。そして、これが発展して、近世には「しりとり」というゲームができました。

    ですが、はじめて「しりとり」ができた江戸時代に流行したのは、こういったタイプのものではなかったようです。ではどういうものなのかというと、「ある文の最後の単語」を「次の文の最初の単語」に続けるもの。江戸時代は、こちらのほうがメインだったようです。

    ですが現在では、「あることばの最後の音」を「次のことばの最初の音」に続けることをいいます。それは、だれでも知っているとは思いますけれども。

    「しりとり」は、上に書いたようなことから考えて、いちおう「レトリック」なのでしょう。そういうことにしておきます。あまりツッコミをいれないで下さい。

  • 深く知る3「しりとり」の歴史--現代の「しりとり」
  • そういった「文字鎖」の伝統をふまえて、話を現代の「しりとり」に戻します。

    「しりとり」をもっと面白くするためには、なにかの「制限」を加えるほうがふつうです。これも、だれでも知っているとは思いますけれども。

    例えば、駅の名前だけでしりとり。

    私(サイト作成者)は「鉄道マニア」ではないので、自分の頭では「しりとり」が成りたたなそうです。なので、「駅すぱあと」(ヴァル研究所)をフル回転させて、作ってみました。スタートは「東京」から。
    東京→上野→乃木坂→神楽坂→葛西→飯田橋→信濃町→千歳烏山→幕張→両国→国立→調布→府中→浦和→早稲田→代田橋→(…永遠に続きそうなので、ここで終わり)

    東京にある駅の名前ばかりです。しかも、京王線が多い。これは、私(サイト作成者)が東京在住で、しかも京王線をよく利用するからです。別に意味はありません。

    どんな「制限」でもいいです。上のように、なにか「制限」を加えることによって「しりとり」を面白くする。これも、これまた現代人の誰もが知っていることです。

    なお。
    このように、「制限」を加えなければ「しりとり」が面白くない理由。それは、日本語には「音」の数が少ないからです。厳密にいえば、「音節」の数が少ないからです。

    日本語にある「音」。それは、基本的な「50音」に、「濁音」「半濁音」をプラスしたもの。それに「きゃ」「きゅ」「きょ」のようなものを加えても、合計して100個ありません。実は、この数はとっても少ないのです。

    そんなわけで、何か「制限」を加えておかないと無限に続くことになるわけです。おしまいに「ん」が出てこないかぎり、未来永劫ということになってしまうわけです。

  • 深く知る4日本語以外での「しりとり」
  • どうも欧米語には、典型的な「しりとり」にあたるものはないようです。どうしてそのように思うかというと、和英辞典などで「しりとり」を調べてみても、載っていないからです。

    たぶん、日本語が「1文字に対して1音」だからこそ、「しりとり」を作ることができるからだと思います。まったく根拠も典拠もない、思いつきの理論なのですが。

    いちおう英語には、

    なるものが、あります。
    もちろん。
    この「word chain」は、日本語でいう「しりとり」と全く同じというわけではありません。英語での「word chain」では。自分の前に言った単語の、最後にある2・3文字を使って、べつの単語を完成させるといったものだからです。

    つまり、「word chain」を遊ぶときには。
    困ったことに、「発音」が問題にはならないのです。たんに、アルファベットを続けていくものなのです。たしかにアルファベットは、もともとは「1つの文字に対して、1つの音があてはまる」ものです。ですが英語では、この原則どおりではないものが非常に多いのです。

    これに対して、日本語は。
    「ひらがな」「カタカナ」であれば、「1つの文字には、1つの発音が当てはまる」ということになります。

    まあ、そういった事情はあるにしても。
    「しりとり」というゲームを、英語であらわすための単語としては。この「word-chain game」が、いちばん近いものだと思います。

    リンク先が、英語版Wikipediaの「Word chain」のページになっています。「word chain」をクリックすると、くわしいことが分かります(ただし英語です)。

    なお。
    中国語では「接尾令」という名前で、「しりとり」と同じルールのゲームがあるみたいです。中国語には詳しくないのですが、たぶん間違いないと思います。
  • レトリックの呼び方
  • 呼び方5
  • 文字鎖・しりとり
  • 参考資料
  • ●『日本語のしゃれ(講談社学術文庫 445)』(鈴木棠三/講談社)
  • 「しりとり」について、これ以上くわしく書かれている本はないと思います。同じ者は『ことば遊び-ことば読本-』(谷川俊太郎ほか/河出書房新社)のなかで、「尻取りことば」の解説もしています。そちらも合わせて参照ください。
  • ●『古典文学レトリック事典』(國文学編集部[編]/學燈社)
  • この本も、江戸時代や、それより以前の「しりとり」について書いてあります。「古典文学」の事典なので、現在の「しりとり」については書かれていません。あと、この本を読むときには「しりとり」と「文字鎖」の両方のページを参考にして下さい。
  • ●『ことば遊び〈ことばの小径〉』(鶴田洋子/誠文堂新光社)
  • このページを作るときに、いちばん参考にした本です。「しりとり」のルールを説明している本ではありません(ルールは、日本人なら誰でも分かる)。そうではなくて、どのようにアレンジすると面白くなるとか、そういったことが書かれている本です。