この例文は、観察している「りんこ」が、思いついた順にならんで書いてあります。本当は、このように順番通りに書かれるものよりも、それぞれの点がバラバラと置かれているほうが、厳密な意味での「点描法」に近いものです(『日本語レトリックの体系』(中村明/岩波書店)を参照)。
けれどもとりあえず、この例文を挙げておきます。
ですが、私の意見を書かせてもらえば、次のことが言えます。
それは、いくつかの物事が目の前にある場合、その物事に順番をつけないということはほとんど無いということです。例えば『日本語レトリックの体系』が点描法の例文としている、
ふたえ瞼、長い睫毛、ちょっととがらせた唇、細い首と撫で肩、きゃしゃでフランス人形のような外見の少年だ。(栗本薫『ぼくらの時代』)
というものもを見るとわかります。つまり、よく読むと「目→睫毛→唇→首→肩」と、人間が注目すると思われるものから順番に並べられているのです。そのことは、
撫で肩、ちょっととがらせた唇、ふたえ瞼、細い首と長い睫毛
と順番を無視して並べた場合に、かなりの違和感があることからもわかります。
ですから、一番最初に書いた「点描法」の定義でも、『日本語レトリックの体系』が定義の中には書いてある、「非連続」で「一つの流れとして描かない」もの、という部分を、あえて定義からはずしました。