音位転換:1つの単語の中で、2つの音の位置を換える
TOPページ音位転換
関連レトリック音位転換

音位転換 おんいてんかん metathesis

『桜蘭高校ホスト部』3巻17ページ
  • ハニー先輩「で? ハ〜ルちゃんっ
  • ひおしがり
  • する〜?」
  • ハルヒ「潮干狩りですか?
  •  (↑しおひがりセット)
  • でも時期じゃないし
  • 引き潮でも…」
-『桜蘭高校ホスト部』3巻17ページ
  • 効果

  • 効果1言い間違いをあらわす

  • 「音位転換」では、ルール破りの発音のしかたをすることになります。そのため、不注意による間違った発音であると受けとられることもあります。
  • キーワード:言い誤り、言い違える、言い損なう、言い誤る、言い間違い、不注意、無自覚、うっかり、不用意

  • 効果2ことばの使い手が、子供であることをあらわす<

  • 子供はしばしば、「音位転換」に分類されるような言い間違いをすることがあります。これは、子供のうちはまだ、言葉を話すのに使われる部分の発達が完成していないためです。そのため、「音位転換」のような発音になってしまいがちということになるのです。このことから、「音位転換」を使って話している人は、幼い子供であることも多くあります。
  • キーワード:幼い、いとけない、幼少、幼稚、子供、子供じみた、児童、幼

  • 効果3あせってしまっていて、ろれつが回らなくなっている

  • あせっているときに人は、話をきちんとすることができなくなります。ややこしい発音をする単語であれば、なおさらです。そんなときに、「音位転換」をおこすことがあります。
  • キーワード:あわてる、あわてふためく、おおあわて、うろたえる、取りみだす、狼狽、動じる、あせる、じれる、じらす、気をもむ、急く、傷心、焦燥、ろれつが回らない、不明確
  • 使い方
  • 使い方1単語の中の音を、お互い入れ替える

  • 1つの単語の中にある、2つの音。その音どうしをお互い入れ替えるというのが、この「音位転換」です。
  • キーワード:入れ替え、替える、交替、取りかえ、チェンジ
  • 例文を見る)
  • 引用は、『桜蘭高校ホスト部』3巻からです。

    主人公は、藤岡ハルヒ(実は女の子)。ハルヒが入学した桜蘭高校は、金持ちの生徒ばかりの学校。その中でハルヒは、奨学優待生として入学した庶民の娘。

    学校生活の中でハルヒ(実は女の子)は、ひとつの部活動に遭遇する。美男子(計6名)がホストとして営業しているという部(くらぶ)。本のタイトルにもなっている、「桜蘭高校ホスト部」というヤツ。

    ここ「ホスト部」でハルヒは、部室内のツボ(800万円相当)を、不注意で割ってしまう。そして、このことが口実となって、ハルヒ(実は女の子)は強制的に「ホスト部」のメンバーに加わることになってしまった。実は女の子なのにもかかわらず、ホスト部に。まあホスト部のメンバーは、ハルヒが女の子とそれを知った上で、ホスト部のメンバーに加えたのだけれども。

    そんな「ホスト部」メンバーと一緒に、海水浴に訪れたのが、今回のシーンです。
    埴之塚先輩こと「ハニー先輩」が、ハルヒに向かって声を掛けています。いわく、
    • ひおしがり
    • する〜?」
    とのこと。ここで、「音位転倒」が登場します。

    念のため確認しておくと、「がり」は間違いです。「がり(潮干狩り)」が正解です。「潮干狩り」というのは、海が「潮干」のときに貝をとる(狩る)ものです。なので、「潮干(しおひ)」でなければなりません。

    ですが、ここでハニー先輩は「がり」と言い間違えてしいます。

    ハニー先輩が「ホスト部」のなかでも、「ショタ」っぽい。部長からは「ショタ女向けのロリ系」と言われている(2巻90ページ)。つまりハニー先輩は、子供っぽいキャラクター。そんなキャラクターだからこそ、「音位転換」を使ってしまうわけです。

    つまり、ハニー先輩の子供っぽさを強調したい。そのために、「がり」という「音字転換」を使ったというわけです。
  • 例文を見るその2)
  • 『探偵オペラ ミルキィホームズ』1巻50ページ([漫画]水島空彦・[シナリオ]子安秀昭/角川書店 角川コミックス・エース)
    • シャロ&ネロ「エリーさんが
    • ・・・・・
    • さわられた
    • !?」
    • コーデリア「ち 違うわよっ
    • さわられた>じゃなくて
    • [[spbさらわれた」
    • ネロ「さわられた?」
    • コーデリア「さ ら わ れ た!!」


    すぐ右に引用した画像は、『探偵オペラ ミルキィホームズ』1巻から。

    タイトルにもあった「ミルキィホームズ」。これは、探偵をしている4人のグループのグループ名です。

    その「ミルキィホームズ」のメンバーは
    • シャロ
    • ネロ
    • エリー
    • コーデリア
    の4人、となっています。

    それでは、問題となっているシーンをみてみることにしましょう。

    コーデリアが、シャロとネロのところにやってくる。コーデリアは、ひどくあわてていう様子。

    そしてコーデリアは、2人に言う

  • 効果4新しいことを知りたいという気持ちにこたえる

  • 今まで知らなかったことを、新しく知る。人間には、そんなことへの「欲求」あります。そして「隠喩」には、その「欲求」を満たすという面をもっています。
    エリーさんが
    さわられた
    と。

    コーデリアが本当に言いたかったのは、
    エリーさんが
    さらわれた
    のはず。正しく言えば、「らわ」となるはずだった。けれども、「わら」になっています。つまり、「」と「」が「音位転換」をおこしているというわけです。
  • レトリックを深く知る

  • 深く知る1その他の「音位転換」の例
  • 日本語に見られる「音位転換」の例を、いくつか挙げておきます。

    1.「音位転倒」したのものが一般的とされるもの。
    • あきばはら(秋葉原・地名) → あきはばら

    • あらたし(新たし) → あたらし
      ※副詞の時には「あらたに(新たに)」という順番が残っている
    2.「音位転倒」するのものが一般的とされるもの。
    • ふんいき(雰囲気) → ふいんき

    • したつづみ(舌つづみ) → したづつみ
    といったあたりが、メジャーな「音位転換」だと思います。

  • 深く知る2「スプーナリズム」との違い
  • 「スプーナリズム」も、「音位転換」と同じように音が入れかわるレトリックです。

    ですが「スプーナリズム」のほうは、単語の範囲を越えて音の交換が起きることを言います。たとえば、「旅のかき捨て」のようなものを「スプーナリズム」といいます。

    これに対して「音位転換」のほうは、あくまで1つの単語の中で音の交換が起こることを指します。たとえば、「ちゃがま(茶釜)」のことを「ちゃ」は「音位転換」にあたります。

  • 深く知る3「音位転倒」の細かな分類
  • このページで解説している、「音位転倒」というレトリック用語。これを、さらに詳しく分類する立場もあります。

    たとえば、『一般修辞学』(グループμ[著]、佐々木健一・樋口桂子[共訳]/大修館書店)では、
    • 離隔転倒 : 隣接していない2音が、入れ替わる場合

    • 隣接転倒 : 隣接している2音が、入れ替わる場合
    と区別されています。その上で、この2つのレトリック用語を合わせたものが「音位転倒(=音位転換)」とされています。

    例えば、このページのさいしょにある例文、「ひおしがり」の場合を考えてみる。するとこれは、「離隔転倒」だということになります。
    なぜなら、「し」と「ひ」という、離れた2つの音を交換しているからです。

    これに対して、もうひとつの例文「さわられた」について見てみる。そうすると、これは、「隣接転倒」です。
    「わ」と「ら」という、隣りあった音が入れかえられているからです。
  • レトリックの呼び方
  • 呼び方5
  • 音位転換
  • 呼び方3
  • 音位転倒
  • 呼び方1
  • 音字換置・音位変換・字位転換
  • 参考資料
  • ●--
  • --