- 夏の高校野球の、埼玉予選大会の
- 入場行進のうちで、西浦高校の野球部の
- 入場シーン
が、今はじまったということです。
でもって。マネージャーをやっている篠岡の感想に使われている
(ホントに夏がはじまっちゃったんだ)
という文。
ここでは「夏」と「高校野球」との関係が、「
換喩」だというのが結論です。
つまり、「夏」と「高校野球」とは
近くのモノを使って例えるものだということです。
なのですが、これではサッパリ分かりません。
そこでここでは「夏」と「高校野球」との関係を、くわしく見ていきます。
ポイント(1)
実際にことばに出てきている表現を探す
ここでは
「夏」というのが、ふき出しの中にあります。
なので、実際にことばになっている表現というのは
「夏」です。
「換喩」を確かめるときには、見落としのないようにしてください。
ポイント(2)
その出てきていることばで、ほんとうに示したい内容を探す
「ほんとうに」というのは、読み手の感じかた次第で変わります。なので、確かにこれだ、ということはできません。
ここでは
「夏の高校野球」のことだとしておきます。
さて、ここからが「換喩」かどうかの判定となります。
ポイント(1)とポイント(2)とが「近い」か?
「夏」と
「夏の高校野球」が「近い」・・・・って何だ?
ここからが、難しいところです。あえて、ひとことで済ませば。
(2)「夏の高校野球」は(1)「夏」でなくてもできるか。
できないとすれば、それは「換喩」です。
もうすこしきちんと書くと、
(1)もしも「言葉になって出てきている表現」のモノが存在しなければ
(2)「ほんとうに示したい内容」のモノは、成り立たない。
それが「
換喩」です。
そのことを
「近い」といっているのです。
この「
換喩」というのと似ている「
提喩」のと、比べてみます。
「
提喩」とは、
含まれたものを使って例えることです。
「含まれる」・・・こちらの説明も、ちっとも分かりません。
「
提喩」の例として、食事をすることを「ゴハンを食べる」と言うのを使っていきます。
ポイント(1’)実際にことばに出てきている表現を探す
これは
「ゴハンを食べる」です。
ポイント(2’)ほんとうに示したい内容を探す
これは
「食事をする」です。
「
提喩」の場合は
ポイント(1’)にポイント(2’)が「含まれているか」
を確認します。
ポイント(1’)「ゴハン」が
ポイント(2’)食事に
「含まれている」・・・・って何だ?
あえて、ひとことで済ませば。
ポイント(1’)「ゴハン」がなくてもポイント(2’)「食事ができる」か。
できるなら、それが提喩
です。「白米」でなくても、ゴハンは成り立ちます。
もうすこしきちんと書くと、
(1’)もしも「言葉になって出てきている表現」のモノが存在しなくても
(2’)「ほんとうに示したい内容」のモノは、成り立つ。
このころからそれが「
提喩」ということになります。
かなり粗い説明ですが、
「隣りあってる」モノだと「
換喩」。
「含まれている」モノだと「
提喩」。ということを、これ以上分かりやすく説明するには、チカラが及びません。
*
このシーンをもう少し深く見ていきます。
「換喩」なのかどうかを、考える前に。まず、この「夏」という表現が「レトリック」だといえるかどうかを、確認しておくことになります。
ようするに。篠岡の目の前で「文字どおり」に「夏という季節がはじまって」いるのであれば、「(ここでいう)レトリック」とすることはできません。ですので前提として、「夏」という言いまわしが「(ここでいう)レトリック」なのかどうかを、いちおう確かめます。
とすると。なにをもって、「夏がはじまる」とするのか。これは、なかなか難しいです。気象庁が「梅雨明け」の宣言をしたときに、「夏がはじまる」のでしょうか。それも、ちょっとヘンではあります。ですが、どちらにしても。
篠岡の目の前で「文字どおり」に、「夏という季節がはじまって」いるわけではない
ということだけは、確かです。ですので、なんらかの「(ここでいう)レトリック」だと言うことはできます。
といったわけで、つぎのステップとして。
ここで使われている「夏」という表現が、具体的には「何のレトリック」になるのかということを考えることになります。
つまり、ここで使われている「夏」という単語が、この表現が「換喩」あのか、それとも「提喩」なのかと。そういったことを考えるという段階に進むことになります。
まず。たとえられた結果、使われることになった言葉を調べます。これは、
「夏」という単語です。これに、
(1)という番号をふっておきます。
つぎに。
「夏」という言いかたをしなければ使われていた、もともとあったと思われる言葉を考えます。これは、セリフとしては示されていないので、想像することになります。
ここでは、
「夏の高校野球」という言葉だということにします。そしてこれを、
(2)とします。
そして。
(1)として使われている
「夏」という単語と、
(2)として考えられる
「夏の高校野球」という言葉を、くらべることになります。
「(1)夏」というモノには、いろいろなイベントや風物詩があります。
たとえば、
花火大会
夏休み
盆踊り
海水浴・・・などなど。
このように、いろいろ思い浮かべることがでいます。そして、この中の1つとして
「(2)夏の高校野球」があるというわけです。
ですので。
ここでの、
「(1)夏」ということばと、
「(2)夏の高校野球」ということばの関係を見る。
すると、
「(2)夏の高校野球」は
「(1)夏」でなければ成り立たない、と考えることができます。
そういったわけで、「換喩」という結論になります。
そして、つけ加えると。
この表現のように、
「(2)夏の高校野球」のことを
「(1)夏」ということばで表すというのは。この場面の流れでは、ありきたりの普通の表現です。そして、ここで使われた表現のように、「ジミ」で「レトリックっぽくない」もの。これが、「提喩」の大きな特徴です。
もしも。このシーンで野球部マネージャーの「篠岡」の口から出たコメントが、
- 夏の高校野球の、埼玉予選大会の入場行進のうちで、
- 西浦高校の野球部の入場シーン
- が今、はじまった。