あだ名・命名:本名とは違う呼び方をする
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関連レトリックあだ名・命名

あだ名・命名 あだな・めいめい nickname

『みなみけ』1巻120〜121ページ(桜場こはる/講談社 ヤンマガKC)
  • マコト「じゃあ次は
  • クラス全員の
  • あだ名
  • つけてもらおうか」
  • シュウイチ「え?」
  • ユカ「それはやめたほうが
  • いいんじゃない?
  • チアキちゃんは
  • 容赦なく急所を
  • えぐるような
  • ところがあるから」
  • チアキ「おいっ
  • なんだそれは」
  • シュウイチ「ならマコトが
  • 真っ先につけて
  • もらいなよ」
  • マコト「よしっ!来いっ! 」
  • チアキ「マコちゃん
  • マコト「普通だ ていうか
  • かわいくてはずかしい!
  • むしろそれが狙いか!?」
-『みなみけ』1巻120〜121ページ(桜場こはる/講談社 ヤンマガKC)
  • 定義重要度2
  • あだ名・命名は、多くの場合は親愛をもって(たまに悪意をもって)、その人の本名とは違う呼びかたをすることです。

  • 効果

  • 効果1あらためて考えると、あだ名となったものに似ている

  • あだ名を作る時、露骨にあだ名の対象を言いあてるようなものは、面白くありません。無意識のうちに印象的な対象へ名称を持ち出すものこそ、あだ名では肝心なことです。そのような力を持っているあだ名こそが、誰しもが使うあだ名になっていくのです。
  • キーワード:印象的、記憶に残る、印象深い、インパクトを与える

  • 効果2「あだ名」は、対象になっている人のと「有縁性」がある

  • ここで言う「有縁性」とは、性格や特徴などと、「あだ名」が一致することが多いということです。言いかえると、「あだ名」というのは、その対象になっている人の「有縁性」がある、といえます。
  • キーワード:つながりのある、有縁性
  • 使い方
  • 使い方1特徴的な部分が利用される

  • 外見などから、その人の特徴を導きだすといったことが、典型的なあだ名の作り方です。
  • キーワード:身体、性格、くせ、動作、衣服、所持品、言葉づかい、外見など
  • 注意

  • 注意1露骨なあだ名はよくない

  • あだ名は、あくまで「その人の人格を、そこはかとなく示すものものです」。したがって、露骨にその弱点やウイークポイントをあだ名として使うのは、好ましくありません。
  • 例文を見る)
  • 引用は、『みなみけ』1巻からです。

    主人公は、3姉妹のハルカ・カナ・チアキ。そして、引用部分で登場するのは、チアキとそのクラスメイトです。

    クラスメイト全員に、チアキからあだ名をつけてもらおう。クラスメイトのマコトが、そんなことを言いだす。そして、言い出しっぺということで、マコトが1番はじめにあだ名をつけてもらうことになった。

    その結果マコトはチアキから、「マコちゃん」というあだ名をつけられることになる。この「マコちゃん」という呼びかたは、その後のストーリー展開に受け継がれていきます。だけれども、それは『みなみけ』を読んでもらうことにしましょう。
  • レトリックを深く知る

  • 深く知る1作品に登場するキャラクターの命名
  • 現実の世界では、本当の名前(実名)が、その人の特徴をとらえているということはありません。ただ、「あだ名」をつけるばあいに、その人の「ひととなり」がヒントになる。それだけです。

    けれども、非現実世界では違います。たとえば、小説・ゲーム・映画・アニメなどの場合。登場するキャラクターの性格や人柄に、大きく影響を受けることがあります。

    つまり作品世界では、実名が「あだ名」のように命名されたものなのです。

    たとえば南家の三姉妹は、春香(ハルカ)・夏奈(カナ)・千秋(チアキ)です。しかしこのように、三姉妹がいてその三姉妹に「春→夏→秋」という名前がついている。これは、現実の世界ではあり得ないと言って差し支えないと思います。

    しかし、非現実世界では異なります。
    ですので、たとえば小説を書くときには、名前をつけるときにもセンスが問われることもあります。

    たとえば、ネコには「スフィンクス」(『とある魔術の禁書目録』)とか。もしくは「シャミセン」(『涼宮ハルヒ〜』とか名づけるぐらいがちょうどいいのでないかと思います。

    ですので、文章を書いたりマンガを書いたりする場合には、ネーミングのセンスも問われているといえるでしょう。

  • 深く知る2「あだ名」と、ほかのレトリックとの関係

  • 深く知るa「あだ名」と「愛称語」との関係
  • 愛称語」というレトリック用語のあります。そしてこれは、このページで解説している「あだ名」と共通する部分があります。

    ですがこの2つには、大きく違っている部分があります。それは、悪意を含んだものがあるかどうかです。

    愛称語」は、その名前の通り「愛称」です。つまり、プラスの効果しか持っていません。
    これに対し「あだ名」は、必ずしもプラスの意味には限られません。つまり、悪意を持った「あだ名」というものもあります。

  • 深く知るb「あだ名」と「換称」との関係
  • あだ名は、「 換称」から作られることもあります。「 換称」というのは、「本当の名前のかわりに通称・あだ名で呼ぶ」、またはその逆に、「特定の人を呼ぶことばをつかって通称・あだ名とする」、というレトリックです。

    くわしくは、「 換称」のページをご覧ください。

  • 深く知るc「あだ名」と「換喩」との関係
  • そのあだ名は、どのように作られるのか。つまり、どのようなレトリックで「あだ名」をつけることが多いのか。

    それを調べると、いちばん数が多いのは「 換喩」です。

    「あだ名」をつけようとしているヒトがもっている、性格とか特徴だとか。そういった「そのヒトとイメージが近い」ものを使う。そういった「 換喩」によるレトリックが、いちばん多くなります。

  • 深く知るd「あだ名」と「隠喩」との関係<
  • 『ラブ★コン』1巻10〜11ページ(中原アヤ/集英社 マーガレットコミックス)
    • リサ——あたしらは
    • 1年2組の
    • オール阪神・巨人て呼ばれてる
    •  《小泉リサ 170cm
    • 大谷敦士 156cm》
    • リサ——必要以上にデカい女と
    • 必要以上に小っこい男が
    • 同じ教室におったら
    • ハタから見ると
    • それは それは
    • おもろいらしくて
    • みんな事あるごとに
    • くっつけたがる


    換喩」のつぎに、よく見かけるもの。それは「隠喩」です。ちょっと手のこんだ「あだ名」のばあい、たいてい「隠喩」からできあがったものです。

    右の引用は、『ラブ★コン』1巻から。

    主人公は、小泉リサ
    そして、高校に入って知りあったのが大谷敦士。

    この2人は、
    オール阪神・巨人て呼ばれてる
    のです。なぜなら背の高さが、リサ・170cmで大谷・156cmというかんじだったから。

    なお。この「あだ名」は、入学したときにつけられたものです。

    この名づけかたを、たとえば「二重の提喩」でもって説明すると。
    「小泉リサと大谷敦士」=たとえられるもの
     抽象化の提喩
    2人がもっているいろいろな性質のうちで、ある抽象的な点に着目する)
    「背の高さがデコボコ」という点まで抽象化される
     具体化の提喩
    「身長がデコボコだ」というカテゴリーに含まれる、具体的な個別例を考えてみる)
    「オール阪神・巨人」=たとえるもの
    というプロセスが成りたっています。ですので、2人の「あだ名」のつけかたは「隠喩」だといえるわけです。
  • レトリックの呼び方
  • 呼び方5
  • あだ名・命名
  • 参考資料
  • ●『レトリックの記号論(講談社学術文庫 1098)』(佐藤信夫/講談社)
  • あだ名について一番くわしく書かれていたのが、この本です。そして、このページを作るにあたって一番参考にした本でもあります。