名詞止め:文の最後を名詞(または代名詞)で終わらせる
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関連レトリック名詞止め

名詞止め めいしどめ nominal phrase

『シャーマンキング』1巻57ページ(武井宏之/集英社 ジャンプ・コミックス)
  • 白い雲
  • 青い空
  • 緑の匂い

  • やっぱ
  • 自然は
  • 気持ち
  • いいわ!
-『シャーマンキング』1巻57ページ(武井宏之/集英社 ジャンプ・コミックス)
  • 定義重要度3
  • 名詞止めは、文の最後を名詞(または代名詞)で終わらせるというレトリックです。

  • 効果

  • 効果1述語の動詞や助動詞を省略することで、スピード感がでる

  • 述語の動詞や助動詞を、省略する(倒置のばあいもある)。これによってスピード感を生むことができます。
  • キーワード:きびきび、すばやい、手早い、身軽、軽快、てきぱき、機敏、きびきび、スピード、テンポ、速さ、高速、省略、約める、約する、省く、はしょる、抜く、略する

  • 効果2省略部分を想像することで、余情のある表現を生みだす

  • 名詞が、文の最後に来る。それはつまり、名詞以降の「動詞・助動詞」が省略されるということです。そこで、省略された語が何なのかを探っていくうちに、省略部分の意味を埋め合わせる部分を想像していくことになります。これが「余情」ということです。
  • 使い方
  • 使い方1述語や助詞・助動詞を使わない

  • 述語や助詞・助動詞を使わない。つまり、主語・目的語・補語をそのままぽんと投げ出す。文末が名詞(体言)になる。このことで、「体言止め」を生みだすことができます。
  • 注意

  • 注意1品格に欠けることがある

  • 品格に欠けることがある。そのため、正式な文章・正式な論文などには、ふさわしくありません。
  • キーワード:品格に欠ける、品がない、安っぽい、なれなれしい、正式な文章、正規、正則、本式、本格

  • 注意2動詞や助動詞の省略によって、窮屈な文になる

  • 動詞や助動詞を省略することで、文が名詞で終わる。それをくり返すと、ぎゅうぎゅう詰めの余裕のない文になっていまいます。
  • キーワード:窮屈、固い、きつい、きっちり、ぎゅうぎゅう、きゅうきゅう、息苦しい、胸苦しい、苦しい、追い立てる、追う
  • 例文を見る)
  • 引用は『シャーマンキング』1巻から。

    主人公は「小山田まん太」。

    まん太は、夜の墓場で「麻倉葉」という男の子と出会う。「麻倉葉」は自分をシャーマンだという。なので、墓場で成仏できていない「霊」のみなさんと一緒になって力を出すことができる。つまり、「霊」の力を身にまとうことができるとのこと。

    だけど引用のシーンは、そういう設定とはあまり関係がなかったりする。ただ単に「麻倉葉」が「ぼけ〜」としているのが、例に出したシーンです。
    • 白い雲
    • 青い空
    • 緑の匂い
    というのが、「名詞止め」に当たります。「白い雲」で文が終わる。つまり、名詞で文章が終わっている。「青い空」と「緑の匂い」も同じです。

    ですので。

    引用した文は、日本語の文法ルールの原則からはずれていることになります。つまり、名詞に当たる「白い雲」「青い空」「緑の匂い」だけで文が終わっています。

    日本語では、名詞句のあとには述語とするための動詞(または助動詞)がなくてはなりません。ですが引用した文には、キチンとした文を完成させるための述語がないのです。それは逆に言えば、この文には「名詞(句)」だけしかないということでもあります。

    そのため。
    例に出してきた文章は、述語を補ってみると、
    • 白い雲がたなびいている。
    • 青い空が広がっている。
    • 緑の匂いが香っている。
    と、こんなふうに補うことができます。

    もちろん、これは一つの例として述語を補ったものです。この述語でなければならないというものではありません。

    けれども、引用した文には述語がないのです。どのような述語であってもかまわないのですが、とにかく述語が足りないのです。

    したがって、引用した文は「名詞止め」ということができます
  • レトリックの呼び方
  • 呼び方5
  • 名詞止め
  • 呼び方4
  • 体言止め
  • 別の意味で使われるとき
  • ●「名詞止め」と「体言止め」との関係
  • 「名詞止め」と「体言止め」との関係。とりあえず、このサイトでは、
    • 「名詞止め」
    • 現代の文で、さいごが名詞(体言)になっている文
    • 「体言止め」古典の文で、さいごが名詞(体言)になっている文
    • (現代の短歌や俳句は、こちらに含める)uli]]
    ということにしておきます。これは、このサイト独自の分類方法です。

    「体言止め」と「名詞止め」は同じものだという考えかたも、多くあります。ですが、この2つを区別するばあいには、古典の文や短歌・俳句については「体言止め」とすることが多いという印象を受けます。

    そのため、上に書いたような区別をつかうことにします。

    たとえば、『古今和歌集』の歌人が得意にしていたのは、「体言止め」です。このサイトでは「名詞止め」という言いまわしは、しません。
  • まあ本当は。
    このサイトには、まだ「(古典文の)体言止め」のページができていません。なので、そんなに厳密に分けたりしても仕方がないのですが。
  • 参考資料
  • ●『新版 書く技術—なにを、どう文章にするか—』(森脇逸男/創元社)
  • 「体言止め(名詞止め)」を使ったばあいの、メリットやデメリット。そういったものをくわしく書いてある本です。