擬態語:「様子」や「心情」などを音で描写する
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擬態語 ぎたいご onomatopoeia

『フルーツバスケット』4巻191ページ(高屋奈月/白泉社 花とゆめCOMICS)
番外編
  • 透「紫呉さん 紫呉さん
  • 大変ですっ
  • 私達のCDドラマ
  • なる物がでるそうです!!
  • その上
  • オリジナルなお話という事
  • ですが…
  • 一体どのような
  • お話なので ありましょうか!?」
  • 紫呉「はっはっはっ
  • 僕には その内容が
  • 目に見えるようだよ
  • 透君……
  • それはもう…
  • 若く ピチピチ モエモエ
  • 女子高生達が たくさん
  • 出てきてメロメロさっ」
  • 天の声[全然違うよ 紫呉さん]
-『フルーツバスケット』4巻191ページ(高屋奈月/白泉社 花とゆめCOMICS)
  • 定義重要度5
  • 擬態語は、「様子」や「心情」などを描写するレトリックです。音をたてないものを、音によって象徴的に表す言葉になります。言いかえると、この世の中で起こる色々な状態を、言葉にうつしたものです。

ここでは、「擬態語」についてだけ解説をしてあります。「 擬音語」「擬態語」に共通することについては、「 声喩・オノマトペ」をご参照ください。
  • 効果

  • 効果1「擬音語」よりも、さらに抽象的な表現になる

  • 擬音語」でも、かなり抽象的なもの言いになります。ですが「擬態語」は、「 擬音語」よりもさらに抽象的な言いまわしになります。これは、「 擬音語」のような「音によるつながり」ながいぶんだけ、実物とコトバ(擬態語)とのあいだに、大きなへだたりがあるためです。
  • キーワード:抽象的、概念、観念、理念、心像、心象
  • 使い方
  • 使い方1——

  • 注意

  • 注意1——

  • 例文を見る)
  • 引用は『フルーツバスケット』4巻から。

    最初に「番外編」と書いてあるように、引用したところはストーリーの進行とは関係がありません。つまり、「CDドラマを買ってください」という趣旨で書かれているだけで、それ以上の意味はありません。ですので、ストーリーの説明は省略。

    で、単刀直入に、使われている「擬態語」をみてみましょう。そのときに、『現代擬音語擬態語用法辞典』(飛田良文・浅田秀子[共著]/東京堂出版)を引用して使わせていただきます。この本は、
    • 「〜の様子を表す」と書いてあるものは「擬態語」
    • 「〜の音(声)を表す」と書いてあるものは「 擬音語
    と明らかな区分けがしてあるので、「擬音語」なのか「 擬音語」なのか迷ったときに見てみると役立ちます。

    では、まず1つ目。
    ピチピチ
    これをさっきの辞典で調べてみると、
    主に若い女性や子どもが生気に満ちている様子を表す。
    という意味だとのこと。そして、「〜の様子を表す」と書いてあるので「擬態語」になります。

    しかし私は、この「ピチピチ」が若い男性に対して使われている例を知っています。それは『「すき。だからすき」』(CLAMP/角川書店あすかコミックス)の1巻22ページ。えみちゃんの言葉です。
    • 「だって——!
    • ここ 女子校だよ!?
    • 右 向いても
    • 左 向いても
    • 女ばっか!
    • たまにいる男は
    • ご高齢な方々!
    • ここはひとつ
    • あたしらの心を
    • 和ますためにも
    • ぴちぴちな男教師を…!!」
    だけど、これは例外的なものでしょう。やはり、「若い女性や子ども」に対する形容として使われるのが普通だと思います。
    CLAMPは『「すき。だからすき」』の中だけでも、「ぽややん」とか「ふわわん」とか、辞書に載っていない「擬態語」を使っています。ですのでこの「ぴちぴち」も、そういった「独特な擬態語」の中の1つだと考えるほうがいいでしょう。

    で、2つ目。
    モエモエ
    これをさっきの辞典で調べてみると、
    載っていません。
    まあ、「萌え萌え」なんていう「擬態語」が辞典に載るようになるには、あと数十年かかりそう。
    ですが、引用した『フルーツバスケット』4巻が発売されたのは、20世紀です。日本と帝政ロシアが戦争していた時代です。ソ連でもなければCISでもない。帝政ロシアが存在して、そこと日本が戦争していた時代。その時代に、「モエモエ」という言葉を使っているなんて、すごい(いちおう「萌え萌え」についてインターネット上で調べてみたところ、1990年〜1995年あたりから使われだした言葉のようです)。

    で、とにかく辞典には載っていないけれど、これも「擬態語」と見ていいと思います。

    最後に、3つ目。
    メロメロ
    これもさっきの辞書で調べてみると、
    本来持っているべき機能をまったく喪失している様子を表す。
    という意味だとのこと。そして、「〜の様子を表す」と書いてあるので、これも「擬態語」になります。

    そんなわけで、紫呉が言っているのは3つとも「擬態語」に当たります。
  • レトリックを深く知る

  • 深く知る1「畳音法」との関係
  • このページで引用したように、「擬態語」や「 擬音語」は、おなじ音をくり返しています。「ピチピチ」、「モエモエ」、「メロメロ」と。

    ですので、これを「 同音反復・畳音法」と見ることもできます。

  • 深く知る2「擬態語」についての日本語の特徴
  • 日本語には、この「擬態語」と「 擬音語」がたくさんあることはよく知られています。そして日本語には、特に「擬態語」が非常に多いと言われています。

    日本語の「擬態語」に見られる特徴としては、
    • 「擬態語」を全般的にみると、日本語には他の言語よりも「擬態語」が数多くある。

    • その中でも、「触覚」にかかわる「擬態語」(ネバネバ、ゴワゴワなど)が多い。

    • しかし日本語には、「味覚」「触覚」についての「擬態語」は少ない。
    というような分析が、一般的です。

  • 深く知る3「擬態語」の使用パターン
  • 「擬態語」がどのような場合に使われるかについて。そのパターンは、『日本語解釈活用事典』(渡辺富美雄・村石昭三・加部佐助[共編著]/ぎょうせい)によると、次のようにまとめられています。つまり、
    • 動物の動作……ピョンピョン跳ねる、ニコニコ集う
    • 動物の様態……ガッチリ構える、ドッシリ座る
    • 人間の感覚……ヒンヤリする、ピリッと辛い
    • 感情・心理状態……ウキウキはずむ心、ムカムカする
    • 事象の状況・変化……キラキラ光る星、サラサラした砂地、ポッカリ浮がぶ雲、仕事がグングンはかどる
    を5つがあげられています。
  • レトリックの呼び方
  • 呼び方5
  • 擬態語・擬態
  • 参考資料
  • ●『言語学大辞典 第6巻術語編』(亀井孝・河野六郎・千野栄一[編著]/三省堂)
  • 辞典の中で「擬音語」のほかに「擬態語」という項目が立っている、きわめて珍しい本。中国語や韓国語での「擬態語」についても述べられています。
  • ●『日本語ヴィジュアル系——あたらしいにほんごのかきかた(角川oneテーマ21 B−116)』(秋月高太郎/角川書店)
  • 「擬態語」だけでなく「 擬音語」にも当てはまることが書かれています。ですが、マンガの中の「擬態語」「 擬音語」を扱っているので、参考になる図書としてあげてみました。
  • 別の意味で使われるとき
  • ●昆虫の「擬態」
  • 余談

  • 余談1「萌え」についての記載がある辞典
  • さきほど、「モエモエ」が辞書に載っていないと書きました。

    ですが、「萌え」という言葉が、サブカルチャーで使われる「萌え」の意味で掲載されている辞書があります。それは『デイリー新語辞典』(三省堂編修所[編]/三省堂)というもの。実際に調べたのは、インターネット上で検索できる「デイリー新語辞典+α」です。

    ちょっと長いけれど、この辞書で「萌え」の部分をひいてみると、このように書いてあります。
    • マンガ・アニメ・ゲームの少女キャラなどに、疑似恋愛的な好意を抱く様子。特に「おたく好み」の要素(猫耳・巫女(みこ)などの外見、ドジ・強気などの性格、幼馴染み・妹などの状況)への好意や、それを有するキャラクターへの好意をさす。対象への到達がかなわぬニュアンスもある。
      〔語源は、アニメ作品のヒロイン名とする説、「燃える」の誤変換とする説など、諸説ある〕


    • 「1.」が転じて、単に何かが好きな様子。または何かに熱中している様子。
    残念ながら「モエモエ」は載っていませんでした。ですが、上に書いた「萌え」の説明に近い意味の言葉でしょう。

    いずれにしても、「萌え」という言葉は、すでに「新語」としての市民権を獲得していると言えます。

  • 余談2サイト紹介
  • 慶應サイコロジー・ソサエティー(KPS)様に、こちらのページを引用していただきました。具体的には、から入りまして、
    ◇発行物情報
      └既刊
        └Vol.13第3号(コミックマーケット68特別号1)
          └「萌え」の国語学(執筆:言語文化研究班)
    へと進んで下さい。たしかに、当サイトが引用されています。
    こちらに書かれている「萌え」と「声喩(オノマトペ)」とについての考察のほうが、当サイトのものよりも深いものになっています。「萌え」が気になる方は、そちらへ進んでみてください。

    …っていうか、うちのサイトって、考察する対象に値しているのか?