重義法:1つの表現からいくつかの意味が読みとれる
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重義法 じゅうぎほう ——

『宙(そら)のまにまに』1巻144ページ(柏原麻実/講談社 アフタヌーンKC)
  • 美星「お は よ〜」
  • 昨日の夜……
  • 最高だったね…!
  • 朝方帰って
  • 平気だった…!?
  • 興奮しちゃって
  • 帰ってからも
  • 眠れなかった——っっ」
  • 朔(うわあああああ)
  • 美星「なんていうのかな
  • 体がうずうず
  • しちゃってというか…
  • あ…かっ
  • ああいうのを
  • めくるめく夜って
  • 言うんだね」
  • 朔(め…めくるめく…!!?)
  • ※強調:原文ママ
-『宙(そら)のまにまに』1巻144ページ(柏原麻実/講談社 アフタヌーンKC)
  • 定義重要度1
  • 重義法は、1つの表現から、いくつかの意味が読みとれるレトリックです。つまり、ある1つの文字・音声から、2つ以上の別のことばが理解できるというものです。

  • 効果

  • 効果1——

  • ——
  • キーワード:——
  • 使い方
  • 使い方1——

  • ——
  • キーワード:——
  • 例文を見る)
  • このページのはじめにある画像は、『宙(そら)のまにまに』1巻から。
  • ここに登場するのは、2人。
    ひとりは、主人公の朔。高校1年生。もうひとりが美星。高校2年生。

    この2人は、幼なじみ。そして、同じクラブ(天文部)に入っている。

    ここで、引用した部分を見てみる。するとこれは、あたかもこれは「ベッドシーン」を言いあらわしたものに思える。

    ですが実際には、「ベッドシーン」のようすを表現したものではない。これが重要です。

    誤解が生まれない程度まで、くわしく書く。すると、つぎのようになります。
    • 昨日の夜の星の観測で、空に輝いて星、
    • 最高だったね。
    • 星の観測をしていたので、
    • 朝方帰ることになったけれど、
    • 平気だった…?
    • 私は興奮して、
    • 家に帰ってから眠れなかったよ。
    • なんていうのかな。
    • 気持ちがうずうずしちゃって、
    • というか。
    • ああいうのを、
    • 星々に圧倒されるって
    • 言うんだね。
    そう。2人は、ともに天文部に入っている。そこでその活動として、夜に星の観察していた。もちろん2人連れではなく、部員と一緒に。

    真実は、そういったところにある。けれども美星が、あたかも「ベッドシーン」があったような言いまわしをする。そこで誤解が生じてしまうわけです。

    この引用部分は、「ベッドシーン」という読み取りかたと、「天文部の活動」という受け止めかたと、2パターンが成りたっています。ですので、「重義法」となるわけです。
  • 例文を見るその2)
  • 『School Rumble』1巻表紙(小林尽/講談社 少年マガジンコミックス)

    『School Rumble』
    スクールランブル Vol.1
    小林尽


    2つ目の引用は、『School Rumble』1巻の表紙です。

    さて。
    まずはじめに、英語の単語の訳を、3つほど書いておきます。英語のお勉強です。『萌える英単語もえたん』は持っていなかったので、ふつうに『ジーニアス英和辞典』(大修館書店)から。
    • school [名]2.(建物・施設としての)学校、校舎
    • rumble[名]1.ゴロゴロ(ガラガラ)という音、騒音
    • scramble[他動]1.…をごちゃ混ぜにする
    『ジーニアス英和辞典』ではCランク(約7300語)までに入っている単語なので、もしかしたら全部知っている人がいるかもしれません。ですが、「rumble」の意味を知らなかった私(サイト作成者)のように、英語が得意でない人もいると思います。なので、3つほど単語の意味を並べておきました。

    ここまでくると、もう分かると思います。
    • 『School Rumble』
    という表現の中に、
    • school rumble
    • scramble
    の、2つの意味が読みとれます。その点が「重義法」ということになります。

    アニメ『スクールランブル』(第一期)のオープニングテーマは、『スクランブル』というタイトルでした。そのことから考えても、偶然のものではありません。ちゃんと作者が意図的に、タイトルに2つの意味を持たせています。

    このコーナーで「日本語ではよく使われる」と書いたくせに、例文が英語だったりするのは、気にしないで下さい。
  • レトリックを深く知る

  • 深く知る1「重義法」が日本語で作りやすい理由
  • 日本語には同音異義語が多くあります。なので、わりと楽に作ることができ、ひんぱんに使われます。

  • 深く知る2「重義法」と「しゃれ」「もじり」との関係
  • この「重義法」が「笑い」の方向に進むと「 しゃれ」に近づいていきます。ですが、「重義法」はマジメな効果をねらったものです。

    一般的に「もじり」と呼ばれるものは、この「重義法」よりは「 しゃれ」に近いものだと思われます。

  • 深く知る3「重義法」と「掛けことば」との関係
  • 『D・N・ANGEL』(杉崎ゆきる/角川書店 あすかコミックス)の
    • D・N・A
    • ANGEL
    のように、一部分(この場合は「A」)のみが重なっている場合は、「掛けことば」となります。
  • レトリックの呼び方
  • 呼び方5
  • 重義法
  • 参考資料
  • ●『センスをみがく文章上達事典』(中村明/東京堂出版)
  • こんなマイナーなレトリック用語にも、説明がなされています。同じ者の『日本語の文体・レトリック辞典』(中村明/東京堂出版)でも、ふれられています。