降移法:考えかたや表現の方法などが急転する
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降移法 こういほう ——

『ランダム・ウォーク』1巻103ページ(吉住渉/集英社 りぼんマスコットコミックス)
ほらね やっぱり
1度も ふりむいてくれない

ねえ 望くん
あたし わかったような気がする

望くんに別れたいって
言った子たちは
望くんがイヤになったわけじゃない

好きだからこそ
一方通行が つらくなったんだ

忘れて楽になりたくなったんだよ…

(ふっ)
あたしは負けないけどね!
(GUTS)
-『ランダム・ウォーク』1巻103ページ(吉住渉/集英社 りぼんマスコットコミックス)
  • 定義重要度1
  • 降移法は、表現が急に変化するというレトリックです。急転するまでの部分については、特に限定はありません。このレトリックのポイントは「考えかたや表現の方法などが、急転する」というところにあります。

  • 例文を見る)
  • 引用した例文は、『ランダム・ウォーク』1巻です。

    主人公は、「優架」。

    「優架」は、望の「準」彼女から正式な彼女へとレベルアップした。しかし、なんか思っているのと違う。毎日、待ち合わせをして登下校したり、そういうことはしている。でもどうやったら、もっともっと好きになってもらえるのか分からない。

    そんなある日。いつものように一緒に渋谷駅まで下校する。そして、駅で「じゃ またあした」「うん またね」と別れた。そのあとの望の様子が、引用した部分です。

    引用した部分のうち、
    「ほらね やっぱり 1度も ふりむいてくれない」
    というところから
    「忘れて楽になりたくなったんだよ…」
    のところまでは、ふつうです。ふつうの、主人公である優架のモノローグのシーンです。少女マンガっぽく目をキラキラっとさせていたりもします。

    が、最後のコマで急に変化をしています。それまでの悩んでいるようなモノローグを一変させています。
    あたしは負けないけどね!
    と、いきなり強気の態度に変わっています。この急激に変化している部分を「降移法」としておきます。(この引用した部分も、「降移法」と「昇移法」のどちらにすべきか、厳密には分けられません。強気になっているのを「ボルテージが上がっている」と考えれば「昇移法」になりそうです。しかし、「話の展開がギャグっぽく低落している」と考えれば「降移法」とすることもできます。この一例から考えても、「降移法」と「昇移法」の区別があまり意味のないことが分かります)。
  • レトリックを深く知る

  • 深く知る1他のレトリックとの関係
  • これから下では、他のレトリックとの関係を見ていきます。

  • 深く知るa「降移法」と「頓降法」との関係
  • 表現が急に変化するまでの流れが次第に盛り上がってきていて、急に下向きに落ちるようなばあい。つまり、「ジワリジワリと上がってきたものが、急に落っこちる」パターンのほうは、「 頓降法」に分類されます。

  • 深く知るb「降移法」と「昇移法」との関係
  • 「降移法」に対して、考え方や表現が上向きに急に変化するレトリックを「昇移法」といいます。ですが、原理としては「降移法」「昇移法」のどちらも同じといえます。これは、どちらを「上向き」ととらえるか、「下向き」ととらえるか、簡単には区別のつかないものが多いためです。
  • レトリックの呼び方
  • 呼び方5
  • 降移法
  • 参考資料
  • ●『日本語の文体・レトリック辞典』(中村明/東京堂出版)
  • 「降移法」については、この本に説明があります。あとは、『笑いの日本語事典』(中村明/筑摩書房)でも少し書かれています。