しゃれ:1つの表現の中に二重の意味をこめるもの
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しゃれ しゃれ puns

『黒執事』[上]2巻70ページ・[下]1巻176〜177ページ(枢やな/スクウェア・エニックス Gファンタジーコミックス)
  • [上]
  • セバスチャン「私は——
  • あくまで執事
  • ですから」
  • [下]
  • セバスチャン「悪魔で執事
  • ですから」
-『黒執事』[上]2巻70ページ・[下]1巻176〜177ページ(枢やな/スクウェア・エニックス Gファンタジーコミックス)
  • 定義重要度2
  • しゃれは、「同じ音」や「似た音」を利用して、1つの表現の中に二重の意味をこめて使うものです。

  • 効果

  • 効果1相手のコトバじりをとって、はぐらかす

  • 「しゃれ」を使うことによる、いちばんのメリット。それは、相手の使ってきたコトバのコトバじりをとらえて、そのコトバをはぐらかすことによって無効化してしまう、というところにあります。
  • キーワード:はぐらかす、ごまかす、まやかす、まやかし、くらます、引っかける、釣る、かつぐ、まどわす、たぶらかす、言いくめる、からかう、冷やかす、茶化す、はやす、はやし立てる、あざける、もてあそぶ、翻弄する、ことばじり、ことばの一部をとらえて、茶々を入れる、口出し、口を出す、くちばしを入れる、干渉、介入、横やりを入れる、水を差す

  • 効果2即興として、意図的に笑いをつくる

  • 「しゃれ」は、ことば遊びの一種です。ですので、その場の流れに応じて「しゃれ」を使うことによって、相手を楽しませたり笑わせたりすることができます。
  • キーワード:即興的、消閑、意図的、心づもり、思惑、故意、滑稽、おもしろい、おかしい、ユーモラス、コミカル、笑い、笑わせる、微笑む、笑む、失笑

  • 効果3ちょっとしたジョークとかユーモアとして使う

  • すぐ上の項目で書いたことと、同じようなことですが。「しゃれ」は、なにか面白いことを手軽に言いたいと考えているばあいに便利なものだといえます。
  • キーワード:機知、頓知、ウィット、当意即妙、機転、気がきく、敏い、鋭い、シャープ、洗練、磨かれる、粋、垢抜ける、小粋、スマート、口上手、口達者、弁が立つ、口がうまい、能弁、達弁、軽口、饒舌、頓才、才気、弁才、座談、かけ合い、談話、会話、対談

  • 効果4日常に軽口として使うことで、円滑な日常生活に役立てる

  • ちょっとした「しゃれ」を使うことが、日ごろの生活を円滑にするのに役に立つはずです。『ことば遊び(中公新書 418)』(鈴木棠三/中央公論社)によれば、『しゃれを愛するのは日本人の国民性』だとのことです。
  • キーワード:日常、日ごろ、日常生活、円滑、なめらか、すらすら、スムーズ、潤滑油
  • 使い方
  • 使い方1同じ音や似た音のコトバに、2つの意味を持たせて使う

  • 実際に使われている言いまわしには、1通りの表現しかがない。それにもかかわらず、その1通りの表現の中から、「音が似ている」もしくは「音が同じ」だったりすることによって、2通りの表現が連想できてしまう。基本的に「しゃれ」は、この原理を使ってつくられます。
  • キーワード:同音、同じ音、類音、似た音
  • 注意

  • 注意1あまり親密ではない人には、使わないほうがいい

  • もちろん、なじみ薄い人に対して「しゃれ」を言うのは、やめておくほうがいいでしょう。場合によっては、相手をバカにしたと受けとられかねません。

  • 注意2すべらないようにする

  • 「しゃれ」は、面白くない使いかたをすることで「駄洒落」になりがちです。ですので「しゃれ」を使いこなすためには、「すべらない」ことが大事です。とはいっても、「すべらないしゃれ」をシーンに即して言うのは難しいものですが。
  • 例文を見る)
  • 引用は、『黒執事』の1巻と2巻からです。

    アニメの『黒執事』第2期放送を見ていたら、ここであげるフレーズが個人的にとても気になりました。ですので、これを例文としてあげておきます。

    この物語の主人公は、
    「黒執事」こと、セバスチャン。そして、その主人で伯爵のシエル・ファントムハイヴ。

    引用したシーンで登場しているのは、執事のセバスチャン。彼は、ふつうの人間からかけ離れてた能力を持っている。知識・品位・料理・武術などなど、すべてにおいて完璧。

    しかも執事のセバスチャンは、単なる「完璧な人間」でさえない。じつはセバスチャンの正体は、「悪魔」だったのだ。

    セバスチャンはとある理由により、「悪魔」でありながら、ファントムハイヴ家に仕えることになった。そのためセバスチャンは、謙遜と皮肉を込めて時々、口に出す。
    あくまで(飽く迄)、執事ですから
    と。
    このフレーズは一見すると、執事である自分を遠慮がちに表現しているようにも思える。しかし、このフレーズは、もう1つ別の意味を持っている。それは、
    悪魔で、執事ですから
    というもの。

    といったわけで、この例では同じ音であることを利用して、ことばに二重性を持たせています。ですので、ここで使われているレトリックは「しゃれ」だといます。
  • 例文を見るその2)
  • 短編「恋しチャイナ!」 『タイホしてみーな』3巻159ページ所収(川村美香/講談社 コミックスなかよし)

    『恋しチャイナ!』


    もう1つ、別の例を引用してみます。この引用は、短編「恋しチャイナ!」(『タイホしてみ〜な!』3巻所収)。

    この「恋しチャイナ」というコトバも、「しゃれ」の例としておきます。

    一応、この作品のおおまかな流れを書くと、つぎのようになります。

    主人公の「甘里」は、中華料理店で働いている女の子。上のイラストの右に描いてあるのが、「甘里」です。

    その中華料理店に、かっこいい男の子がやってくる。彼の名前は「一哉」。「甘里」の向かいにある中華料理店の息子だという。

    …とまあ、そんなふうに話は進んでいきますが、「しゃれ」というレトリックとして重要な点は、
    • 「恋したいな」(かっこいい男の子だから)
    • 「チャイナ」(中華料理店だから)
    という2つの意味が、1つの表現から読みとれるということにあります。
  • レトリックを深く知る

  • 深く知る1「ことば遊び」のレトリック
  • 「しゃれ」は、「 ことば遊び」の代表的なものです。
    そのほかにある「 ことば遊び」のレトリックとして、リストとしてつぎのようなものをあげてきます。
    • アナグラム」:文字の並びかたを入れかえることによって、違ったべつの言葉をつくるもの。
    • 交叙法」:一定の規則に従って文字をならべること。
    • 字喩」:漢字の形をもとにした謎解きをするもの。
    • アクロスティック」:それぞれの句の最初に使われている文字を並べると、別のことばがあらわれるもの。
    • アルファベットアクロスティック」:「ABC順」があらわれるという特別な「 アクロスティック」のこと。
    • 「折句」:「 アクロスティック」が短歌でつくられた場合のこと。
    • 回文」:前後どちらから読んでも意味が通じるというもの。
    • 「しゃれ」:1つのことばの中から2つの意味が読みとれるもの。
    • 「駄洒落」:
    • 地口」:「ことわざ」などのパロディをするもの。
    • 早口ことば」:口が回らなくなるようなことばを、あえて言うもの。
    • なぞかけ」:「〜とかけて〜と解く、心は〜」という形になっているもの。
    • 文字鎖・しりとり」:ようするに「しりとり」のこと。
    • 「類喩」:
    • 数装法
    • 異分析」:ことばを語源とは無関係に分割した後、新しいことばをつけ加えるもの。
    くわしくは、それぞれの項目を参照してください。

  • 深く知る2「しゃれ」と「駄洒落」との違い
  • 「しゃれ」と「駄洒落」とは、どこに違いがあるのか。じつは、ハッキリとした線引きはありません。どこから「しゃれ」で、どこからが「駄洒落」なのかといったことが誰にも分かるような基準というものはありません。

    ですが、いちおう。「しゃれ」のほうは、
    • 「キャッチコピーになるような、マジメな部分もある」
    • 「『駄』が付いていないので、できばえがよい」
    というニュアンスがある。それにたいして「駄洒落」は、
    • 「マジメなモノは、ふつうダジャレとは呼ばない」
    • 「『駄』が付いているので、できの悪いダメなしゃれ」
    といった雰囲気を持っていることがあります。ですがどちらも同じようなものであることは、たしかです。

    このあたりの、さらにくわしいことについては、
    『落語のレトリック—落語の言語学シリーズ2—(平凡社選書 165)』(野村雅昭/平凡社)の「第五章」(の最後のほう)に書かれています。

  • 深く知る3「しゃれ」と他のレトリックとの違い
  • このページで扱っている、「しゃれ」。
    この「しゃれ」が真面目な方向に進むと、「 重義法」と近くなります。ですがこの「しゃれ」の多くは、笑いやユーモアをねらったものです。

    また「しゃれ」は、「1つのことばに2つの意味を持たせる」ということになります。ですので、「異義兼用」の一種とみることができます。

    こういった、隣接したレトリック用語との比較については、
    『日本語の文体・レトリック辞典』(中村明/東京堂出版)に細かく論じられています。

  • 深く知る4日本語には「しゃれ」が多いのか?

  • 深く知るa結論
  • 説明が長くなるので、はじめに結論を書いておきます。

    日本語に、「しゃれ」「駄洒落」が多い理由。それは、
    • 日本語は「音節」の数が、すごく少ない。
    • なので、「音節」を組みあわせるパターンが限られる。
    • そのため、「同じ音」「似た音」が生まれやすい。
    • したがって、日本語では「しゃれ」「駄洒落」を作りやすい。
    というものです。上に書いたことを、最後のほうから逆に書いていくと、[[dvsq日本語には「しゃれ」「駄洒落」が多い。
  • それは、日本語に「同じ音」「似た音」のことばが多いから。
  • では、どうして「同じ音」「似た音」が多いのかというと、
  • 日本語には「音節」の種類が少ない。
  • なので、「音節」の組みあわせパターンが限られるから。
ということになります。
  • 深く知るbまず、はじめに
  • で。まず、はじめに。
    ある専門用語を1つ、説明しておく必要があります。それは、「音節」という専門用語です。

    そんなの知っている、という方は、
    の項目は読まなくても、まったく問題ありません。へ進んでください。

    さて。
    このでは、(音声学でいう)「音節」という用語を説明していくことになるります。このサイトでは、なるべく専門用語を書かないように注意しているつもりなのですが。[日本語には「しゃれ」が多いのか?]ということを知るためには、どうしても「音節」という用語を使わざるをえないのです。

    そういったわけで、「音節」の説明をスタートします。

    まず。日本語だけを考えれば、
    1つの「音節」は、1つの「ひらがな」「カタカナ」であらわすことができる
    といえます。たとえば「ナイフ」であれば。その上で、「ナ・イ・フ」といったぐあいに、カタカナごとに区切る。すると、「ナイフ」は3つの「カタカナ」になる。なので、「ナイフ」は3つの「音節」がある。そういうふうに分けることのできる1つのカタマリ、それが「音節」です。

    まあ。
    この「ひらがな」「カタカナ」1つに対して、1つの「音節」というルール。残念ながら、これには例外があります。「きゃ」「しゅ」についている、小さな「ゃ」「ゅ」「ょ」のようなもの。これは、1文字では「音節」になることができません。「きゃ」とか「ひゅ」のように、大きな文字とペアになって、はじめて1つの「音節」になります。

    今までのことをまとめると。ちょっと抽象的な定義になるのですが、
    ことばを使っている人が、1つずつの区切りと考えるカタマリ。
    これが、「音節」です。
    先ほど書いた、小さな「ゃ」「ゅ」「ょ」について確認しておくと。「きゃ」という音のカタマリを、「き」と(小さい)「ゃ」に分けることはできません。「きゃ」というコンビで、「1つのまとまり」だと受けとると思います。そういったわけで、「きゃ」「しゅ」みたいなものは2文字でもって、1つの「音節」をつくることになります。

    そして、その「音節」というものを、よく見る。すると。「1つのカタマリ」と受けとっているもの。つまり「音節」には、必ず「1つ(以上)の母音」を持っている、というルールがあるのです。日本語でいえば、
    • 「母音だけ」で音節をつくるもの
    • → ア行(あいうえお)
    • 「子音+母音」で音節をつくるもの
    • → カ行・タ行・ガ行など
    • 「子音+半母音+母音」で音節つくるもの
    • → きゅ・ぎゅ・ちゃ など
    という種類があるのですが。(日本語の半母音は子音としてあつかうようなので)、けっきょく日本語では「子音+母音」か「母音だけ」という2種類になります。

    ここまでくると。「ナゼ、ここまで細かいことを説明をしているのか?」と、フシギに思うかもしれません。ここで、「音節」の説明を長々と書く理由。それは、ここから先で「外国語の音節」についての説明が求められるからです。

    「外国語の音節」は、「日本語の音節」に比べて、どのような違いがあるのか。まさか、地球にある言語ぜんぶを1つ1つ調べるわけにもいかないので。ここでは「英語」に限定して考えてみます。

    ここで出してくる英語の例として。“knife”という英単語で考えてみます。
    カンのいい人は、すぐに分かったと思いますが。この“knife”と比べるために、わざわざ日本語の例として、「ナイフ」を出したのです。

    さて。“kinfe”のの発音を見てみると、/náif/となります。
    そして、この“kinfe”の発音/náif/を「音節」で区切ってみようとすると。おどろくなかれ、この/náif/は全部で1つの「音節」なのです。発音を細かく調べると、/n(子音)+ái(二重母音)+f(子音)/となります。

    上に書いたように、
    「1つ(以上)の母音」が「いくつかの子音」を連れて、1つのカタマリになったもの。それが「音節」です。/náif/は、母音の/ái/が、子音の/n/と/f/といっしょ出てきています。なので「音節」としては、これ以上分けることができないです。

    この[2]で確認しておきたいこと。それは、
    • 日本語
    • =1つ1つの「音節」が小さい
    • =「音節」の種類が少ない
    [[uli英語
  • 1つ1つの「音節」が大きい
  • 「音節」の種類が多い
ということです。
※このサイトで「しゃれ」という名前で扱っているものが、「地口」という名前で呼ばれていることもあります。