川柳:「五・七・五」の音でつくられた詩
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川柳 せんりゅう ——

『貧乏姉妹物語』1巻カバー下(かずといずみ/小学館 サンデーGXコミックス)
パンの耳

 タダでもらえて

    うれしいな
-『貧乏姉妹物語』1巻カバー下(かずといずみ/小学館 サンデーGXコミックス)
  • 定義重要度3
  • 川柳は、「五・七・五」の音でつくられた詩のことです。

  • 効果

  • 効果1諷刺などをあわらすことができる

  • 「川柳」には「社会諷刺」を題材にしたものが多くあります。
  • キーワード:諷刺、諷する、追及、非難、皮肉、あてつける、あてつけ、あてこする、皮肉る、皮肉、アイロニー、世相、世態、世情

  • 効果2人情の機微を「穿つ」

  • 人情のビミョウな動きを「うがつ(穿つ)」。そのことによって、人情味のある、滑稽な「川柳」が作られます。
  • キーワード:滑稽、おもしろい、おかしい、下らない、ナンセンス、バカらしい、おかしみ、変、奇妙、妙、珍奇、型破り、奇抜、ひょんな、けったい、人情味、情、情け

  • 効果3おどけた、ユーモアのあふれる表現ができる

  • 滑稽でユーモアのあふれる表現ができたり、おどけた表現と作ることができる
  • キーワード:諧謔、ユーモア、ユーモラス、ジョーク、おどけ、ひょうげる、ざれごと、冗談、ふざける、おどける、道化る
  • 使い方
  • 使い方1「切れ字」とか「季語」といったものがない

  • 「俳句」には、「切れ字」や「季語」のようなものがあります。ですが「川柳」では、そのようなルールはありません。
  • 使い方2身の回りのものを使ってつくる

  • 「川柳」の題材は、人間生活の身の回りにあるものです。
  • キーワード:身の回り、身辺、傍ら、たもと、座下、座右、手回り
  • 例文を見る)
  • 例文は、『貧乏姉妹物語』1巻から。

    このお話は、貧乏な姉妹の物語です。

    …って、タイトルそのままでは、さすがにまずい。
    なので、2ページに書いてある「STORY」を引用してみましょう。
    • STORY
    • この漫画は、父親はギャンブル好きが高じて借金をつくって蒸発、母親とは死別した姉妹 きょうとあすが主人公。
    • 2人は天涯孤独で貧しいけれど、家賃2万6千円(フロなし1K)の築40年のアパートで、夢と希望と節約を掲げて仲睦まじく暮らしています。そう、今日も明日も——
    とのことです。

    つまり、「貧乏」な生活だということを知っておいてほしいのです。姉の「きょう」と、妹の「あす」が送っているのが、とっても「貧乏」な生活だということを、頭に入れておいてほしいのです。

    例文として出した画像の中にある「川柳」が、どういった環境の中で詠まれているか。つまり、どんなに「貧乏」な生活をしているのか。
    それが、例文の「川柳」を知るためには不可欠なものです。

    なので、くどいほどに何度も「貧乏」と書かせていただきました。

    それを踏まえて、引用してきた画像の「川柳」を見てみる。
    パンの耳

     タダでもらえて

        うれしいな
    ここに、この姉妹の強さを感じ取ることができます。

    私(サイト作成者)のコメントなんてものは書いても意味がないので、これ以上は言及しません。この「川柳」については、このページをご覧になっているみなさんが、それぞれ楽しんで鑑賞してみてください。
  • レトリックを深く知る

  • 深く知る1「川柳」と「俳句」との関係
  • 上にも書きましたが、「川柳」というのは「五・七・五」の音でつくられた詩のことです。

    なのですが、このような定義をしてしまうと、「川柳」だけでなく「俳句」も含まれてしまうことになってしまいます。みなさんご存じのように、「俳句」も同じように「五・七・五」の音を使ったものだからです。

    と、そのように書くと。
    このページを読んでいるみなさんは、きっと思うでしょう。「川柳」と「俳句」とをキッチリと分けることのできる、そんな定義を書いてほしいと。

    しかし。
    「川柳」と「俳句」との区別をすること。それは、かなり難しいことです。少なくとも、私(サイト作成者)には、とてもじゃないけれど不可能です。

    そこで、「とりあえずの目安となるような基準」を表にしておきます。ですが、この表はあくまで「目安」です。つまり、「おおよその一般論」です。現実には、この表には当てはまらないような「俳句」や「川柳」があります。

    俳句川柳
    切れ字
    (や、かな、けりetc.)
    あることが多い
    けれども最近の俳句には、
    切れ字がないものも結構ある
    切れ字に当たることばが出てきても、
    実際には切れ字として働いていないと見てよい
    季語あることが多い
    けれども最近の俳句には、
    季語がないものも結構ある
    普通ない
    季語に当たることばが出てきても、
    実際には季語として働いていないと見てよい
    詠む対象自然が多い
    これは、季語があることに由来している
    人間模様や社会諷刺が多い
    これは、季語がないことに由来している
    使うことば文語が多い
    これは、切れ字が文語体になっているため
    口語が多い
    これは、切れ字にとらわれずに書かれるため
    というように、とりあえず表にまとめてみました。
    なお、主要参考文献は
    • 『俳文学大辞典』(加藤楸邨・大谷篤蔵・井本農一[監修]、尾形仂・草間時彦・島津忠夫・大岡信・森川昭[編]/角川書店)
    です。

    くりかえしますが、上に書いた表は「そういう傾向のものが多い」ということを言っているにすぎません。実際には、そんなにかんたんには分類できません。

    どうしてかというと。
    「俳句」を作っている人自身が持っている「俳句」のすがたが、それぞれ違う。同じように、「川柳」を作っている人自身が持っている「川柳」のすがたが、それぞれ違う。そのためです。

    このようなことから。
    この「俳句」と「川柳」とをどのように分類するかということを議論の対象にすることは、非常に危険です。「俳句」の作者それぞれのアイデンティティー、「川柳」の作者それぞれのアイデンティティーを刺激することになります。
    このサイトで使っているメール箱には入りきらないくらいの、数多くの反論・抗議・批判のメールが来る。…ことはないと思うけれど。とにかく非常に危険です。

    そして実は。
    「俳句」と「川柳」との違いはどこにあるのか、という論争は、最近になって始まったものではありません。
    スペースの都合上このサイトでは、そのあたりの歴史的な流れは省略することにします。
    けれども、その点から考えても、「俳句」と「川柳」との分類にかかわる問題は非常に危険です。

    そのため、どうにも歯切れの悪い説明しかすることができないのです。すみません。

  • 深く知る2「川柳」と「音数律」との関係
  • この「川柳」は、「五・七・五」の音を使うことから「 音数律」の一つといえます。
  • レトリックの呼び方
  • 呼び方5
  • 川柳
  • 参考資料
  • ●『俳句と川柳—「笑い」と「切れ」の考え方、たのしみ方—(講談社現代新書1478)』(復本一郎/講談社)
  • 「俳句」の歴史的な流れ。「川柳」と「俳句」との違い。そういったあたりに興味がある方にはオススメです。
  • 余談

  • 余談1引用した部分は、ほんとうに「川柳」なのか?
  • 私(サイト運営者)は、画像に書かれている「パンの耳/タダでもらえて/うれしいな」という歌を、「川柳」だと書きました。

    ですが、実は悩みました。この歌が「俳句」なのか「川柳」なのか、どっちなのか悩みました。そんなアホなことで悩まなくてもいいんじゃないかと感じるかたが多いのではないかと思いますが、とにかく悩んだのです。3日間ほど。

    その理由をひとことでいえば、上五(初句)が「名詞止め(体言止め)」に思える、というものです。
    もしも、「パンの耳」で「名詞止め(体言止め)」をしているとすると、りっぱな「句切れ」があるということになります。だとすると、これは「俳句」なのではないだろうか、とまあそんなふうに考えたわけです。

    ですが結局、「パンの耳」という上五(初句)は「名詞止め(体言止め)」ではない、という結論に達しました。
    というのは、次のような考えによります。

    たしかに、「パンの耳」という名詞は、形の上では「名詞止め(体言止め)」をつくっている。
    しかし、その「パンの耳」と、それにつづく「タダでもらえて/うれしいな」とのあいだに、「空間のひろがり」が感じられない。
    とすると、「名詞止め(体言止め)」になっているのは、形式上のことにすぎない。つまり、「句切れ」として「パンの耳」ということばが置かれたとは考えにくい。
    とすれば、「パンの耳/タダでもらえて/うれしいな」という歌は、実質的には「句切れ」をもっていないということになる。

    そんな感じで、この歌は「川柳」にあたるという分類にたどりつきました。

  • 余談2アイキャッチが「川柳」
  • ところで。
    一部のアニオタに向けての情報として。

    2006年に、この『貧乏姉妹物語』はアニメとして放送していました。放送局は、テレビ朝日系。放送時間は、草木も眠る丑三つ時。

    で、その放送で(一部のアニオタに)好評だったのが、アイキャッチ。ちなみに、アイキャッチというのは、CMに入る前とCM明けに放送される映像のことです。

    何が好評だったのか。それは、アイキャッチが「川柳」だったことです。
    私(サイト運営者)はコミックスのカバー下(本体表紙)に書かれている「川柳」のうち1つを引用しました。ですが、アニメ化された時に、この「川柳」がアイキャッチになって使われたのです。

    そして。
    「東映アニメーション」にある『貧乏姉妹物語』のページには、全10話のアイキャッチが壁紙となって並んでいます。そして、無料ダウンロードできるようになっています(2022年11月現在)。

    ですので、興味のあるかたは、へ進んでみてください。