兼用法:1つの単語で性質の大きく違うことばを結びつける
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兼用法 けんようほう syllepsis

『ドージンワーク』1巻108ページ(ヒロユキ/芳文社 まんがタイムKRコミックス)
  • 想像力豊か
  • 露理「あ そういえば多分
  • ジャスティスがあなたの事
  • 探してるわよ」
  • 星「え!?」
  • 露理「なにか渡すとか
  • 言っていたよな…」
  • 星(渡す… まさか…)
  • (あの時本当はなじみさんが
  • 起きていて…)
  • 【以下、星の想像】
  • なじみ「キスされそうに
  • なったの…」
  • ジャスティス「な… なにぃ…」
  • ジャスティス(星に)「やぁ…キミに
  • いいものを渡そう
  • 星「え…」
  • ジャスティス「引導を」
  • 【想像、ここまで】
  • 星(ガクガクガクガク)
-『ドージンワーク』1巻108ページ(ヒロユキ/芳文社 まんがタイムKRコミックス)
  • 定義重要度3
  • 兼用法は、1つの単語をつかって、種類や性質の大きく違うことばを結びつけるレトリックです。1つだけあることばが、片方ではたらいている意味と、もう一方ではたらいている意味とで異なることになります。とくに「本来の意味」と「比喩の意味」とを兼ねているばあいを指すことが、多くあります。

  • 効果

  • 効果1ふざけた言いまわしや、気品のある上品な言いまわしを作ることができる

  • 「兼用法」を使うと、1つのことばが2つ以上の意味を持つことになります。この性質をつかって、おもしろいふざけたフレーズを仕立てることができます。また時には、気品のある上品な表現を作りあげることもできます。
  • キーワード:ふざける、戯れる、たわける、ざれる、おかしみ、おもしろい、おどける、ユーモラス、コミカル、ウイット、機智、頓知、機転、上品、品格ある、気品ある、優雅、エレガント、派手、美しい、きれい、優美、華やか

  • 効果2ふざけた表現を使うことで、冗談やジョークなどを作ることができる

  • 上に書いたような、「ふざけた表現」や「おかしな表現」を使う。そうすれば、冗談やジョークなどを、作りだすことができます。
  • キーワード:喜劇的、諷刺的、滑稽、諧謔、冗談、ざれごと、ジョーク、洒落、ダジャレ、軽口、ユーモア、冗句、多義的地口、ことば遊び、詩

  • 効果3ときとして、意外性のある引きしまった表現を生みだすことができる

  • 機転のきいた表現や、ウイットあふれる言いまわしというのは。ときとして、はっとするような引きしまった表現を生みだすことになります。これは「兼用法」が、思いもよらない意表をついたフレーズを作ることができるということによります。
  • キーワード:おどろき、はっとする、驚愕、驚嘆、驚異、あっと言う、舌を巻く、目を疑う、引きしめる、気を張る、張り詰める、緊張、息詰まる、声をのむ、固唾をのむ、予想外、思いがけない、思いもよらない、思いの外、端なくも、期せずして、図らずも、意外、心外、慮外、意表をつく、不測

  • 効果4ことわざなどに使われており、新しいスローガンなどつくることができる

  • 上に書いたように「兼用法」には、機転に富んだ表現をつくるチカラがあります。このチカラを使うことで、新しいキャッチフレーズやスローガンなどをつくることができます。また、すでにある格言などのなかにも「兼用法」は多く使われています。たとえば、「ペンは剣よりも強し」といったときの「強さ」というのは、「ペン」のばあいと「剣」のばあいとで、ズレがあります。このズレが、「兼用法」だということを示しています。
  • キーワード:スローガン、ことわざ、格言、金言、箴言、寸言、警句、標語、キャッチフレーズ、モットー、合いことば、説得、説く、説きつける、説きふせる、言いこめる、説伏、ことわざ、格言、金言、箴言、警句
  • 使い方
  • 使い方1「くびき語法」の手順で、ことばをくくり出す

  • 基本的なことばの操作は、単純な「 くびき語法」のルールと同じです。手を加えないで書くと共通することになることばを、1つにまとめるということです。数学でいう、「カッコでくくる」という作業に似ています。
  • キーワード:結びつける、つなげる、つなぐ、つなぎ合わせる、接続、共通因子、共通項、カッコでくくる、くくりだす、支配、束ねる、くびき語法
  • 使い方2関わりあっているそれぞれの表現ごとに、意味が別々になるようにする

  • ただし、単純な「 くびき語法」とは大きく違ったところがあります。それは、関わりあっているそれぞれの表現ごとに、意味が別々になるということです。つまり、結びついている片方で持っていた意味と、もう一方で持っていた意味とが異なっているということです。
  • キーワード:意味が合わない、意味が一致しない、異なった意味、違う意味、違った意味、別の意味、別個の意味、別々の意味、意味的に異なる、意味の相違、意味を兼ねる、意味を兼用する、2役を演じる、2つの意味
  • 使い方31つの語の中に、意味が入り組んでいるということになる

  • すぐ上に書いたことを、いいかえれば。2つの語に結びついている、くびきの元となっている1つの語。この1つの語の中に、意味が入り組んで錯綜しているということができます。
  • キーワード:(意味が/意味論的に/意味の結びつきが)錯綜した、交錯した、入り込んだ、入り組んだ、入り乱れた、からまった、こんがらがった、もつれる、もつれ込む、ごたつく、こじれる
  • 使い方4とくに、「本来の意味」と「比喩の意味」との結びつきを指すことが多い

  • 「兼用法」というレトリック用語。これは多くのばあい、「本来の意味」と「比喩の意味」とが結びついているばあいを指すことになります。 というのは意味が大きく異なるように、くくり出す。そのためには、どうしても「文字通りの意味」にたいして、「比喩としての意味」という関係になりやすいからです。くわしくは【2.「本来の意味」と「比喩の意味」との結びつき】の項目をご覧ください。
  • キーワード:「文字どおりの表現」と「比喩的表現」、「文字どおりの意味」と「比喩的な意味」、「本来の意味」と「転義的意味」、「字義的意味」と「比喩的意味」、「字義的意味」と「象徴的意味」、「基本的な意味」と「比喩の意味」、「本来的な意味」と「比喩的な意味」
  • 使い方5結びつけていることばに距離があるほうが、より効果が大きい

  • こういった「兼用法」の特徴を考えてみると。結びつけていることばに距離があるほうが、より効果が大きいということがいえます。
  • キーワード:対照的、対する、相対する、対応、対比、コントラスト、対置、対峙、照らし合わせる、照合、離れる、かけ離れる、隔たる、隔てる、かけ隔てる、かけ隔たる、隔絶
  • 注意

  • 注意1「比喩」を使うときには、慣用化している必要がある

  • たいていの「兼用法」では、「本来の意味」と「比喩の意味」とが結びついている。これは、上に書いたとおりです。なのですが、ここにはちょっとした問題があります。それは、「あまり奇抜な比喩は使えない」ということです。くわしくは、【3.「兼用法」の限界】の項目に記しておきました。ですので、そちらもご参照ください。
  • キーワード:慣用、慣れる、使い慣れる、言い慣れる、聞き慣れる、見慣れる、耳慣れる、手慣れる、こなれる、習慣、習わし
  • 例文を見る)
  • さいしょの引用は『ドージンワーク』1巻から。

    主人公は、長菜なじみ。ここで引用したところでは、ちょっとしか登場しません。ですが、いちおう主人公です。

    そのほかにこの場面で登場するのは、あと2人。まず1人目は、「ジャスティス」。本名不明。本人が言うところでは、
    「僕はジャスティスであり、ジャスティス以外の何者でもない。そこに名字・名前といった区別なく、だからこそ常にジャスティスでいられるのさ。」(1巻60ページ。句読点はサイト運営者。)
    だそうです。

    もう1人が露理(つゆり)。名字不明。いつもベレー帽を身につけている。この場面では、露理のセリフからはじまる。ジャスティスが、
    • 露理「なにか渡すとか
    • 言っていたよな…」
    とのこと。

    このシーンでジャスティスは、星に「同人誌」を渡そうとしています。けれども、星はこれを「引導(を渡す)」だと勘違いをしています。というのは星は、ジャスティスの幼馴染みである「なじみ」に、ストーカーまがいのことをしたから。というか、ストーカーだったから。

    そんなわけで、もともとは「同人誌を渡す」はずだった。なのに、「引導を渡す」ということになってしまっている。そのために、
    • 「同人誌を渡す」(実際)
    • 「引導を渡す」(原の想像で)
    と、2つの表現があらわれています。ここでは「渡す」ということばが、「同人誌~」と「引導~」という2つあります。このように、「渡す」という単語が「同人誌~」と「引導~」の両方に係っている場合。これを「くびき語法」といいます。

    そして今回の引用では、「渡す」が「本来の意味」と「比喩の意味」とが結びついています。「同人誌を渡す」のおふは「渡す」という単語は、そのまま辞書通りの意味(本来の意味)です。しかし「引導を渡す」というのは、辞書通りではありません(比喩の意味)。

    このように「本来の意味」と「比喩の意味」とが結びついているものを、「兼用法」と呼びます。
  • 例文を見るその2)
  • 『スレイヤーズ(新装版)』36ページ(あらいずみるい・神坂一/角川書店 角川コミックス ドラゴンJr.)
    • リナ「へーんだ
    • あたしは
    • いつだってどんな
    • 姿してたって
    • ちょ—— 魅力的
    • だもんね♡」
    • 盗賊B・T「フッ たしかに
    • そうかも
    • しれませんね」
    • きみの 心と唇を
    • 出来る ものなら
    • 奪ってみたい
    • リナ「はあ?」


    引用は『スレイヤーズ(新装版)』から。

    主人公は、“自称美少女魔道士”の「リナ」。

    「リナ」たちは、この辺りで名を馳せている「盗賊B・T」を追いかけている。

    盗まれそうになっていた「クリスタルの女神像」を取り返すことができた「リナ」。彼女に対して「盗賊B・T」は「美しい」と言ってくる。それが引用の場面です。
    • きみの 心と唇を
    • 出来る ものなら
    • 奪ってみたい
    という文。これが「兼用法」になっています。つまり、
    • 「きみの心を奪う」
    • 「きみの唇を奪う」
    と、2つの表現が浮かび上がってくるのです。

    そして。このうち「心を奪う」というのは、「気持ちを自分のものにする」という意味で使われています。ですが、「唇を奪う」のほうは、「キスをする」という意味で使われています。つまり、同じ「奪う」ということばでも、その示している内容が違うのです。
  • レトリックを深く知る

  • 深く知る1「くびき語法」のグループに含まれる、ほかのレトリック用語との関係

  • 深く知るa単純な「くびき語法」との関係
  • 見た目だけの、ことばの操作を見れば。「兼用法」のやっていることは、単純な「 くびき語法」のものと同じです。共通することになることばを、くくり出す。そのくくられるコトバと、くくるコトバの間に、どういった関係になるか。その図で示してみました。
     文法的に
    正しいか
    意味的に
    正しいか
    名称
    くびき語法
    (広義の)
    くびき語法
    (狭義の)
    △(本来の意味と比喩的意味)兼用法(異義兼用)
    △(具体的な意味と抽象的意味)異質連立
    ×意味論的破格くびき 破格くびき
    ×統語論的破格くびき
    くわしくは、下にある以降をご覧ください。

    なおこのサイトでは、『レトリック事典』をもとにして定義づけをしています。

  • 深く知るb「破格くびき」との違い——それぞれには適合
  • つぎに、「兼用法」と「 破格くびき」との違い。ここでポイントとなるのは、
    結びついているどちらの単語にも、意味として成りたっているかどうかが
    というところです。

    破格くびき」の例としては、
    [
    • 「私は最近はじめてこの手でこの目で触れたのだ」
    • ——(吉本ばなな『キッチン』)
    といったものが、あげられます。

    これをよく見てみると、
    もとに戻すと、「この手で触れたのだ」+「この目で触れたのだ」となる。「この目で触れる」という表現は合っていない。
    のです。

    これにたいして「兼用法」のばあいには。あくまで、それぞれとの関係では表現が合っているのです。

    まあ、もっとも。
    「合っている」のか、それとも「合っていないのか」ということ。この判断は、じつはかなり難しいものです。とくに、比喩として使われている「兼用法」ようなばあい。それがどこまで、ふつう許された使いかたをなされているのかということは、いちがいに決められないこともあります。
  • キーワード:それぞれには適合、おのおのには適合、各個には適合、ひとつひとつには適合、個別には適合、別個に適合

  • 深く知る2「異質連立」との違い——結びついているどちらの単語に対しても、対等な関係
  • 「兼用法」と「異義兼用」とには、大きな違いがあります。それは、
    結びついているそれぞれの単語が「どちらもメイン」の関係にあるのか、それとも「どちらかがオマケ」という関係にあるのか

    という点です。

    つまり。
    「兼用法」のばあいには、結びついているどちらの単語にたいしても「対等」な関係にあります。これにたいして「異質連立」のばあいには、結びついている単語のどちらかがメインでもう一方は「オマケ」という関係になります。

    それと、もう1つ書いておくと。
    「兼用法」は、「 くびき語法」の代表的なパターンといえます。「 くびき語法」の下位分類としては、とても一般的なものとして広く知られています。

    しかしながら「異質連立」は、かなりマイナーなレトリック用語なのです。たとえば「異質連立(attelage)」は、たとえば英語の「wikipedia」にも、ドイツ語の「Wikipedia」にも書いてありません。フランス語の「wikipédia」にだけ、「attelage」の項目があります。

    じつはこの「異質連立」というのは。なぜか近代になってから、フランス語にだけ登場したものなのです。そういったわけもあって「異質連立」という用語は、あまり多くは見かけません。

    「兼用法」は、「異質連立」とは大きく違います。広く考えれば「兼用法」は、まとめられたことばが本来もっていた意味が、おのおので違うばあいを全て含みます。さすがに、「 くびき語法」で例文として出してきた、[[dvsq
    • 「1人目は、シャベルを手に取った。
    • 2人目は、つるはしを、
    • 3人目は、クマデを。」uli]]
という文は、「兼用法」とはいえません。ですが、それぞれに応じて「意味が違う」、といったときの「意味が違う」ということば。これは、かなりあいまいです。ことばの意味なんていうものは、どこからが同じで、どこからが違うとかいうことはできません。連続しているのです。

そのように考えると。「 くびき語法」のうちかなりのものが、「兼用法」に当てはまるということになりそうです。
  • キーワード:いずれもが主要な意味、どっちも主要な意味、どれも主要な意味

  • 深く知る3「本来の意味」と「比喩の意味」との結びつき
  • びついている一方との関係では「字義的な意味」。もう片方との関係では「比喩的な意味」。とまあ「兼用法」は、おおかたこんな具合になっているということです。

    というのは。
    意味が大きく異なるように、くくり出すとなると。どうしても「文字通りの意味」にたいして、「比喩としての意味」という関係になりやすいからです。

    「兼用法」の例を書いてみると。
    • 「思惑だの褌(ふんどし)なんてえものは、えてして外れやすい」
    • >——(五代目古今亭志ん生『びんぼう自慢』)
    といったものが、あげられます。

    これをよく見てみると、
    • もとに戻すと、
    • 「褌(ふんどし)が外れる」[[lio]]のほうは「本来の意味」
    • ということができる。
    • だけども、「思惑が外れる」のほうは
    • 「比喩の意味」だ
    ということができます。

    このように。
    それぞれの関係で、意味が大きく異なるように「兼用法」をつくっていくと。どうしても、「本来の意味」と「比喩の意味」という結びつきになるということです。

    ですので。
    とくに、「本来の意味」だったことばと「比喩の意味」だったことばを、ひとまとめにしてしまうばあい。このようなものが、「兼用法」の典型例となります。

  • 深く知る4「兼用法」の限界
  • 「兼用法」にも限界があります。

    それは何かというと、「比喩の意味」とはいっても、それほど奇抜なものは使えないということです。つまり、今までで見たことも聞いたこともないような比喩は、「兼用法」になれないということです。

    なぜなというと、そもそも「兼用法」それ自体が「アクロバット的」だからです。つまり、いくつかあった意味の違う、とばを1つにくくったというだけで、十分に「文法のルールから外れた」ことをしていることになります。もしもかりに、ここで突拍子もない比喩をつかったとしたら。それは、ただ「意味不明な文章」になることでしょう。

    そういったわけで「兼用法」につかわれる比喩は、よく知られた分かりやすいものでなければならないのです。

    ためしに。「唇を奪う」をgoogleで検索してみる。すると、約22,100件ありました(2007年6月現在)。少なくとも、読み手・聞き手が何のことだか分かるくらいには世間に広まっているものでなければ、「兼用法」にはなれません。

  • 深く知る5くくることばが「形容詞」の例
  • 「兼用法」にかぎらず、「 くびき語法」によって1つにまとめられる単語は、ふつう「動詞」です。というか、ほとんど「動詞」です。

    ですが。私(サイト作成者)が知っているかぎりでは1例だけ、「形容詞」の例文をのせているものがあります。それは、『レトリック小辞典』です。

    この例文は、どこからみても「兼用法」にあたるものです。なので、ここに載せておきます。
    • 飛ぶ鳥の声も
    • 聞こえぬ奥山の
    • 深き心を人は知らなむ
    • (古今集恋一・535 読人しらず)
    この和歌は、「奥山が深い」ことと「人の心が深い」ことの「兼用法」です。つまり、「深い」という「形容詞」が1つにまとめられているわけです。1つは「奥山」、もう1つは「人の心」。どちらにたいしても、「深い」ということばが役目を果たしているわけです。

    さらにいえば。片方の「奥山が」につかわれる「深い」は、「本来の意味」です。けれども、もう一方の「人の心が」につかわれる「深い」は、「比喩の意味」です。この部分でも、「兼用法」の条件にかなっています。

    \数少ない例ですが、「形容詞」のタイプもあります。
  • レトリックの呼び方
  • 呼び方5
  • 兼用法
  • 呼び方4
  • 異義兼用
  • 呼び方3
  • 双叙法(雙叙法)・一筆双叙法(一筆雙叙法)
  • 呼び方1
  • 双筆叙法・兼用語法
  • 参考資料
  • ●『日本語のレトリック—文章表現の技法—(岩波ジュニア新書 418)』(瀬戸賢一/岩波書店)<
  • この本が、「くびき法」の項目で説明しているもの。それは、このサイトでいう「兼用法」にあたります。ジュニア新書なので、やさしく解説してあるのでオススメです。
  • ●『シェイクスピアのレトリック』(梅田倍男/英宝社)
  • シェイクスピアが使うような「兼用法」といえば。それは、喜劇的なウイットの効果のあるものです。そういったわけで、おかしみのある「地口」のような「兼用法」についての解説については、この本がしっかりしています。
  • 余談

  • 余談1「引導」とは、どんなものか
  • 「引導を渡す」。

    そのような言いかたが使われることは、それなりにあると思います。どちらかというと、「古めかしい」というか「時代がかった」言いまわしだと感じます。それでもまあ、使わないというわけではありません。

    この「引導を渡す」というフレーズの意味。それは、だいたい次のようものです。

    「引導」ということばの元の意味は、葬式のシーンに関するものです。死んだ人が、無事にあの世へ行くことができるようにする。そのために、葬式の場で僧侶が法語をとなえる。そのことによって、死者が自分自身のことを死んでいることを分からせることを言うようになります。

    このことから「引導を渡す」とは、「最終宣告する」ことを指すようになります。そしてとくに、「死ぬことが避けられない状況だとしらしめること」を意味することになりました。

  • 余談2「引導」と「印籠」
  • 「印籠を渡す」。

    これは、ただの間違いです。だいたい、印籠なんかを渡されても、なんの役にも立ちません。