多種列挙:語をいくつも並べて表現するもの
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多種列挙 たしゅれっきょ synathroesmus

『爺さんと僕の事件帖—机の中の秘密—』1巻30ページ(しかくの/角川書店 あすかコミックスDX)
斯くして
受動的消極的済し崩し的に——
放課後探偵団
(とか言うが
実際の活動は塾が
終わってからや)は
結成された!!

ついでに言うと
今日限りで 解散予定や!!
-『爺さんと僕の事件帖—机の中の秘密—』1巻30ページ(しかくの/角川書店 あすかコミックスDX)
  • 定義重要度1
  • 多種列挙は、語を重ねて表現を行うというレトリックです。実際には、「 列叙法」や「 列挙法」といったレトリックと、ほとんど同じものといえます。

  • 効果

  • 効果1「列叙法」「列挙法」と、ほぼ同じといえるものがある

  • 「多種列挙」というレトリックを、「 列叙法」「 列挙法」とほとんど同じものと考えるものもあります。一見するとバラバラに置かれているけれども、実はつながっている。そのばあいには、この列叙法」「 列挙法」のページもご覧ください。
  • キーワード:列叙法、列挙法

  • 効果2「類義累積」と、ほぼ同じものといえるものがある

  • もう1つ「多種列挙」と似たレトリックに、「 類義累積(類義語累積法)」というものがあります。同じような語(類義語)を立て続けにならべたときには、このに近いものとなります。「多種多様」は、「 類義累積(類義語累積法)」の特徴となっている「なんとか言いあらわそうとして類語を並べる」というものに当てはまることもあります。
  • キーワード:類義累積(類義語累積法)

  • 効果3ののしりや非難をすることができる

  • 参考資料によっては、この「多種列挙」が使われる場面は限定されているとします。その場面というのは、ののしり(invective)や攻撃(attack)、非難(criticism)といったものです。
  • キーワード:非難、攻撃、ののしる、けなす、こき下ろす、そしる、誹謗、罵詈、罵倒、中傷、悪口、苦言、憎まれ口、悪態、雑言、不作法な言葉、あくどい、悪質、悪辣、非人間扱い、非難、とがめる、とがめだて、追及、攻撃、苦情、いちゃもん、言いがかり、難癖
  • 使い方
  • 使い方1いくつものことばを重、次々と重ねていく

  • 基本的に「多種列挙」は、ことばを積みかさねていくレトリックです。
  • キーワード:(語や観念を)くり返す、重ねる、重なる、たび重ねる、反復、重複、積みあげる、積もる、積む、盛る、堆積、集積、累積、山積み、山積、積みかさなる、積みかさねる、折りかさなる、折りかさねる、重なりあう、幾重、重畳、重層、層
  • 使い方2形容詞や名詞を、連続して登場させる

  • 多くのばあい「多種列挙」で並べられるのは、形容詞や名詞(句)です。たしかに形容詞の連続についてのみ、「多種列挙」とするものもあります。ですが一般的には、形容詞だけでなく名詞句を含むものとされます。
  • 例文を見る)
  • 引用は『爺さんと僕の事件帖』1巻から。

    主人公は、「中寺逸実」という少年。

    彼の友だちのグループは4人。「鳥居護」という大阪弁の少年。「清水清香」というちょっと強気な少女。「今河真知子」という少しこわがりだけど霊感をもっているみたいな女の子。あと、主人公の「中寺逸実」本人の合計4人。

    彼らは、一匹の猫を拾う。そして、その猫を飼う場所として、廃屋となっている家を見つける。
    そして4人のグループは、そこに猫を放してくるために、廃屋へと向かうことにする。

    しかしその廃屋は、
    • 真知子「20年前に一家心中が起きて以来
    • 出ると噂の廃屋なのです……!!」
    • (13ページ)
    という、ちょっと怖いところ。

    だけれども、「逸実」と仲間たちは、そこに猫を放すことに決める。そして、問題の廃屋へ向かう。

    しかし実際には、その廃屋には「人が住んでいる気配」があった。それに先月分の「電気料金の領収書」もあった。その家は本当は「廃屋」ではなく、誰かが生活しているらしい。

    でも「雨戸やら釘付けよってからに…」(20ページ)という、やはり風変わりな家であることには変わりない。
    さらに「逸実」は、その廃屋(?)に猫を置き去りにしてしまった。

    というわけで、引用の部分になります。
    • 受動的消極的済し崩し的に——
    • 放課後探偵団
    • (とか言うが
    • 実際の活動は塾が
    • 終わってからや)は
    • 結成された!!
    ということでもう一度、あの廃屋に向かうことになる。「放課後探偵団」という、今日限りの名前をつけ

    そこで使われている、
    受動的消極的済し崩し的に——
    という部分を、「多種列挙」と考えます。似たようなことばを並べたもの、といえるからです。
  • レトリックを深く知る

  • 深く知る1「多種列挙」は、かなりマイナーなレトリック用語
  • この「多種列挙」は、かなりマイナーなレトリック用語です。そして「多種多様」は、だいたいのところ「 列叙法」「 列挙法」「 類義累積(類義語累積法)」のいずれかに当てはまります。

    ですので、とりたてて「多種列挙」というものを1つのレトリック用語とする必要はないのかもしれません。けれども、『レトリック事典』が項目としてあげているので、一応レトリック用語としておくことにします。

  • 深く知る2「形容動詞」の積みかさねは、「多種列挙」にあたるか
  • 「形容詞」を集めたモノは、まちがいなく「多種列挙」です。そして、「名詞(句)」を列挙したばあいにも、(ふつうは)「多種列挙」に含まれます。

    ですが、引用した例文は「形容動詞」の集積です。これは、「多種列挙」に含まれるのか。

    以下は、私の個人的な考えかたですが。

    「形容動詞」の積みかさねは、「多種列挙」に含まれると考えます。

    理由その1。
    ヨーロッパの言語には、形容動詞がない(はず)。「形容動詞」の役割を担っているヨーロッパの品詞は、「形容詞」だといえる。なので広く考えれば、「形容動詞」は「形容詞」に含まれると考えてよいと思われます。

    理由その2。
    日本語の文法をどのように定義するかについては、「形容動詞」を認める立場は少数派です。「形容動詞」という品詞を認めているタイプは、少ないのです。「形容動詞」は「形容詞」のうちの1つであると考えるのが一般的です。くわしくは、[Wikipediaにある形容動詞のページ]をご参照ください。
  • レトリックの呼び方
  • 呼び方5
  • 多種列挙
  • 呼び方4
  • 語集積
  • 参考資料
  • ●『レトリック事典』(佐藤信夫[企画・構成]、佐々木健一[監修]、佐藤信夫・佐々木健一・松尾大[執筆]/大修館書店)
  • 日本語で書かれた本の中では、この本がいちばんくわしいと思います。例文がいくつも載っているのもポイントです。
  • ●「synathroesmus」の説明が書いてあるサイト
  • 今回の「多種列挙」のようなマイナーなレトリック用語については、インターネット上で見つけることもできます。
  • 余談

  • 余談1レトリック用語の説明が、英語で書かれている
  • 今や、だれもがインターネットを使っています。インターネットの中から、自分が知りたいレトリック用語を引き出すことも十分にできます。

    この「多種列挙」のページも、かなりの部分でネットの情報を参考にしています。

    ですが、問題は1つあります。それは、たいていレトリック用語の説明は、英語で書かれているという点です。そしてハッキリ言って、私(サイト作成者)は英語が苦手です。

    いちおう辞書を引きながら日本語訳を作ったあとで、「多種列挙」のページの作成を始めています。ですが、その日本語訳がどのくらい正しいモノなのかと尋ねられたら、「あまり自信がない」と答えざるをません。