早口ことば:言いにくい発音を早口で言うもの
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早口ことば はやくちことば tongue twister

『赤ずきんチャチャ』6巻107ページ(彩花みん/集英社 りぼんマスコットコミックス)
  • ニワトリ「コ——ッ」
  • コ——ッ」
  • (ズーン)
  • チャチャたち「うひょ〜〜!?」
  • ポピィ「に…にわとりっ!?」
  • ラスカル先生「にわとりが
  • 巨大化している!!?」
  • リーヤ「庭には二羽
  • にわとりが…」
  • しいねちゃん「バカは
  • だまってろぉっ!!!」
-『赤ずきんチャチャ』6巻107ページ(彩花みん/集英社 りぼんマスコットコミックス)
  • 定義重要度2
  • 早口ことばは、2つのパターンがあります。1つ目のパターンは、言いにくい発音を早口で言うもの。もう1つが、ゴロのいい文句を早口で言うものです。

  • 効果

  • 効果1「ことば遊び」の1つとして用いられる

  • 「早口ことば」は、「ことば遊び」の一種です。「遊び」なのだから、笑いを誘うようなものといえます。
  • キーワード:笑い、笑う、笑む、笑み、微笑、口元がゆるむ、笑みがこぼれる、遊び、遊戯、楽しむ、遊ぶ
  • 使い方
  • 使い方1言いづらい発音をもった単語をならべる

  • 「早口ことば」には、2種類があります。1つが、みなさんがよく知っている「早口ことば」。つまり、速さを求めるもの。もう1つは、正確に話すことを目的とするものです。くわしくは、言いにくい音のつながりをご覧ください。
  • 例文を見る)
  • 引用は、『赤ずきんチャチャ』6巻から。

    ニワトリ小屋のお掃除に出かけた、主人公「チャチャ」たち。しかし、そのニワトリ小屋で見つけたニワトリは、考えられないほど大きい。

    その感想として、リーヤが言っている、
    • 庭には二羽
    • にわとりが…
    というところが「早口ことば」にあたります。「ニワ」という発音が4回ほど直後にくり返し登場するのがポイントです。

    「言葉あそび」のものなので、どちらが正解だとかそういうことはありませんが、「裏庭には二羽、庭には二羽、にわとりがいる」という長いバージョンもあったりします(こっちだと「ニワ」は7回ほど直後にくり返している)。
  • レトリックを深く知る

  • 深く知る12つのパターンがある「早口ことば」
  • 上にも書きましたが、「早口ことば」には2つのパターンがあります。ですので、これから下には、そのパターンを分けて考えていきくことにします。これは、2つのパターンのどちらに圧はまるかによって、その性質には大きな違いがあるからです。

  • 深く知るa言いにくい発音を早口で言う——正確さを求める
  • 一つ目の「早口ことば」。

    これは、「口が回らなくなるようなことばを、あえて早く言う」というものです。
    同じ発音、または似ている発音が何度もつづいていると、スピードを上げて言うのは難しくなります。ですが、あえてそれを早口で言いながら、しかも正確に発音するというのを楽しむ遊びです。

    有名なものでは、
    • 「生麦生米生卵」
    • 「東京特許許可局」
    • 「隣の客はよく柿食う客だ」
    • 「かえるぴょこぴょこ三ぴょこぴょこ合わせてぴょこぴょこ六ぴょこぴょこ」
    のようなものがあげられます。

    このばあいの「早口ことば」は、「舌もじり」と呼ぶこともあるそうです。

  • 深く知るbゴロのいい文句を早口で言う——速度をもとめる
  • これにたいして、2つ目の「早口ことば」。
    こちらは、「ゴロのいいフレーズを、早く言う」というものです。

    つまり、決して「言いにくい」わけではないのです。ただ、そのフレーズの中に、音の響きがそろって出てくるだけです。けれども、こちらの「早口ことば」も、その音の感覚がいいことから、よく使われます。

    有名なものでは、
    • 「瓜売りが瓜売りに来て、
    • 瓜売り残し、
    • 売り売り帰る瓜売りの声」
    であるとかいったものです。また、画像で引用することになったのも、こちらのパターンのものです。

    なお。
    たんに「早口ことば」を言ったばあい、「1.」のほうだけ(=うまく言えなくなりそうなフレーズ)を表していることもあります。つまり、「2.」のほう(=ゴロがいいフレーズ)については「早口ことば」には含めないで考えることもあります。

  • 深く知る2英語の「早口ことば」
  • この「早口ことば」があるのは、日本語ばかりではありません。

    例えば英語では、
    She sells sea shells by the sea shore.
    みたいなものが有名です。音が似ている[s]と[ʃ]というものを使ったことばが、バラバラに何度も出てきます。なので、とても発音しづらいものになります。

    とくに日本人にとっては、[s]と[ʃ]との発音を区別すること自体がヘタです。なので、さらに難易度が上がります。

  • 深く知る3言いにくい音のつながり
  • 下には、「言いにくい音のつながり」を、表にしてならべてみました。この「言いにくい音のつながり」が、「早口ことば」のを作り出します。

    ただ、下の表は音韻論の用語を使っているので、すこし難しく感じるかもしれません。その場合には、口で実際に発音してみると、「言いにくい」ことが分かると思います。
    • ●破裂音の連続——[p][t][k][b][d][g]といった子音が続くもの
    • たどたどしい 暖かだ 父危篤 はかばかしい ただちに ペプチド
    • ホルモンヘクトパスカル キャピキャピギャル ピチピチ 舌鼓 アボカド
    • タクティクス セアカゴケグモ 不可欠
    • ●摩擦音の連続——[f][s][z][j]などの子音が続くもの
    • ビヒズス菌 ひしひし わざわざ 事実上 種々相 手術室 あさひ
    • 商事 よそよそし(い) 骨粗鬆症 諸施策
    • ●鼻音の連続——[m] [g]といった子音が続くもの
    • 真鶴 ななまがり まごまご ものものしい なみなみならぬ 雨雲
    • 寝耳に水 見守る フェミニニティー(女らしさ) 生麦生米生卵
    • ●流音の連続——[r][l]などが続くもの
    • 〜られる 忘れられない メリルリンチ銀行
    • ●両唇音の連続——[p][b][m]などの子音が続くもの
    • パビプベポ マミムメモ バビブベボ
    • ●前舌音の連続——[a][i][e]などが続くもの
    • ただならぬ ボトリティスシネリア歯 グリチルリチン酸
    • アセロラドリンク リステリン
    • アクリルニトリル(繊維の原料) 過失致死
    • ●喉頭音の連続——[k][g][h]などの子音が続くもの
    • 科学館 博学 極北 幾何学 力キクケコ ガギグケゴ
    • ●拗音の連続——「ャ」「ュ」「ョ」「ヮ」などが続くもの
    • 斜視 支社 車掌 所領 所持 種々相 病状 主宰者
    • 除去 逆境 手術 取捨 授業 拒食症 傷つく
    • アキュビュー(コンタクトレンズ) マイスターシュテュック(万年筆)
    • ●濁音・半濁音が続くもの
    • ボディコン 出ずっぱり ずばずば 漁場 叙事詩 パブレストラン
    • ヴィジュアル ギガヘルツ ペプチドホルモン[[li]ルリジガバチ(蜂)ポジティブギガ(車)
    • ●母音が続いたもの
    • DIY(ディー・アイ・ワイ) WOWWOW(ワウワウ) アイオア資金
    • 相生(あいおい) あいうえお キヨスク
    • ●促音のあとに有声音がきたとき——母音や、[b][d][g][z]など
    • ホットドッグ ハンドバッグ ベッド ドッグ エッジ ビッグ・エッグ
    • 『ネーミングの極意—日本語の魅力は音がつくる—(ちくま書房470)』(木通隆行/筑摩書房)、
    • 『音相—社名、商品名から人名まで ヒット・ネーミングは“音”で決まる—』(木通隆行/プレジデント社)より



  • 深く知る4正式な「早口ことば」というのは存在しないということ
  • 「早口ことば」には、「似ているけれども、ちょっとフレーズが違っている」なんてものが、たくさんあります。
    つまり、枝分かれしたかのように、言いかたに細かい違いがあったりします。

    たとえば。
    • 瓜売りが瓜売りに来て、売り売り帰る瓜売りの声
    • 瓜売りが瓜売りに来て瓜売れず、売り売り帰る瓜売りの声
    • 瓜売りが瓜売りに来て瓜売れず瓜売り残し、売り売り帰る瓜売りの声
    とまあ。本当はもっと、いろいろあります。(ヒマな方は、サーチエンジンで「瓜売り」でも検索してみてください。)

    そこで、多くの人が考えるのではないでしょうか。
    どれが正しい、正式な言いかたなのかというと。

    ですが「早口ことば」というものには、、どれが正式とかいった考えかた自体ができないといえます。

    なぜなら、「早口ことば」が「話しことばの中で生まれたもの」だからです。
    「早口ことば」というのは、その口に出した時の「音」を楽しむモノです。つまり「書きことば」ではなく、「話しことば」のなかで遊ばれるものなのです。

    そのため。次から次に、ちょっと改良した新しい言いかたが広まったりしやすいものです。とくに、こういったものは「はやりすたり」が激しいものなので、またたく間に「似たフレーズ」が増えていきます。

    で、その結果。どこかで聞いたような、でもどこかが違う、そんな「早口ことば」が大量に生まれることになります。

    そういったわけで。「どれが最初のモノか」とか、「どれが標準のモノか」とか言うことはできません。たしかにテレビが発達した現代では、ある程度は「一般的なモノ」というのは出来つつあるかもしれません。ですがですが、時代とともに違うパターンが新しく登場するということは変わらないと思います。
  • レトリックの呼び方
  • 呼び方5
  • 早口ことば
  • 呼び方2
  • 舌もじり
  • 呼び方1
  • 早口・早ことば・くりことば
  • 参考資料
  • ●『言語遊戯の系譜』(綿谷雪/青蛙房)
  • この「早口ことば」の歴史だとかいった面を、深く書いてある本。「早口ことば」について、くわしく知りたいと思ったばあいには、手に取ってみることをおすすめします。ただしそのばあい、かなり古い本なので古本屋か図書館で探してください。