同語回避:同じ言い回しを避ける表現を使う
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同語回避 どうごかいひ exergasia

『プリティフェイス』1巻48〜49ページ(叶恭弘/集英社 ジャンプ・コミックス)
どこにも行かない

私 ずっとそばに

いるから

消えたりしないから

理奈のために
いつまでも
いっしょにいるよ

-『プリティフェイス』1巻48〜49ページ(叶恭弘/集英社 ジャンプ・コミックス)
  • 定義重要度2
  • 同語回避は、同じことを意味している文を、変化させてくり返すことです。つまり、近くで同じ単語や表現が重ならないように、同じような内容だけれども表現の異なったことばをならべることです。

  • 効果

  • 効果1平板ではない、起伏のある文をつくることができる

  • 同じ単語が、いくつも連続して並んでいる。それはたしかに、強調するためには役に立つ手段です。しかし、一本調子になってしまうというデメリットもあります。そこで「同語回避」を用いることによって、起伏のある文にすることができます。
  • キーワード:平板を避ける、単調を避ける、一本調子を避ける、起伏、でこぼこ、凹凸、波、浮き沈み

  • 効果2ことばが貧弱だと思われるのを防ぐ

  • 同じことばが、いくつも無造作に使われている。そんな文章は、書いた人が力不足だという感覚を与えてしまいます。それを避けるために、「同語回避」が使われることがあります。
  • キーワード:貧弱、乏しい、貧しい、貧困、手薄、見劣り
  • 使い方
  • 使い方1ワザと、似た意味のことばを用いる

  • 同じことばが何度も重ならないように、ほぼ同じ内容の別のことばをつかう。これが「同語回避」です。
  • キーワード:類義語、類句、手を変える、手を変え品を変え、いろいろな、多種、多様、多種多様、多彩、色とりどり
  • 例文を見る)
  • 引用は『プリティフェイス』1巻。

    例に出してきたのは、姉と妹が再会したシーン。

    …であれば説明がすぐに終わります。ですが、事情はもうすこし複雑です。
    なので、この漫画のはじめのほうから説明をしていくことにします。

    主人公は、高校生の乱堂政。彼はバスの事故に遭う。そして、事故から一年後に目を覚ます。
    すると…。

    乱堂政の顔が、自分の大好きな子・栗見美奈の顔になっていた。あやしげな医者の手術によって。

    そして、道ばたで偶然に、「美奈」に会ってしまう。つまり、「美奈」の顔をした二人が出会ってしまったわけです。

    しかしここで「美菜」は、目の前にいる自分そっくりの顔をした子を、双子の姉である「由奈」だと思った。どうしてかというと、姉の「由奈」は、2年前に家出をしていたから。

    なので。
    引用したシーンは、姉(ニセモノ)の「由奈」と、妹(ホンモノ)の「美奈」との間でやりとりされている場面なんです。

    まあ、それはともかく、引用したシーンを見てみましょう。
    どこにも行かない

    私 ずっとそばに

    いるから

    消えたりしないから

    理奈のために
    いつまでも
    いっしょにいるよ
    というように、「由奈」は言っています。ですがこれは、「もう家出はしない」ということを、表現を変えているだけです。そういうわけで、「同語回避」となります。
  • レトリックを深く知る

  • 深く知る1マンガでの「同語回避」の使われかた
  • たいていのばあい。
    コミックのセリフでは、つづけて同じことばを話しています。つまり、「畳語法」に代表されるような、同じことばをくり返すことが多いのです。言いかえれば、「同じことばを避ける」ということは、あまり行われません。

    そのことを考えに入れると、引用した『プリティフェイス』のセリフは、数があまりない事例といえます。このシーンでは、明らかに同じことばを避けるという「同語回避」を積極的に使っているからです。
  • レトリックの呼び方
  • 呼び方5
  • 同語回避
  • 呼び方3
  • 同一思想反復・多面みがき
  • 呼び方1
  • 労作法
  • 参考資料
  • ●『日本語の文体・レトリック辞典』(中村明/東京堂出版)
  • 「同語回避」について、かなりくわしい部分まで説明してある本。「同語回避」というレトリック用語の重要度からすると、かなり多くのスペースが割かれているといえます。